中国の不動産開発大手である碧桂園(カントリー・ガーデン)の経営悪化により、同社が手がけるマレーシアの巨大開発計画「フォレストシティー」の先行きが危ぶまれている。その規模なんと15兆円もの開発計画だが、現地を取材して分かったのは、地元住民や不動産関係者が「ゴーストタウン」と口をそろえる恐ろしい実態だった。(ジャーナリスト 竹谷栄弥)
中国の碧桂園とマレーシア地方政府による
15兆円規模の超巨大開発計画とは
フォレストシティーはマレーシア最南端のジョホール州南西部、シンガポールと海峡を挟んだ向かい側に位置する。碧桂園が2015年からジョホール王室や同州政府の支援を受ける地場企業と共同で開発を進めており、マレーシアとシンガポールにまたがる4つの人工島を埋め立てて造成し、住宅やオフィスビル、商業施設などを建設する巨大開発計画だ。開発規模は15兆円規模(1000億ドル)で、最終的には70万人が住むと計画されている。
計画当初はシンガポールと目と鼻の先という好立地に加え、好調な中国経済にも支えられ、「低価格帯のアパートでも1部屋2000万円以上した。中国富裕層に飛ぶように売れていった」(地元の不動産業者)という。単なる投資物件としてだけでなく、中国本土の政情不安への危惧から「避難先」としてのニーズや、シンガポールに近いセカンドハウスとしての魅力が販売を後押しした。
中国政府の海外投資規制とコロナ禍が直撃
不動産サイトでは「投げ売り」状態
しかし、中国の習近平政権による海外投資規制の強化や、コロナ禍の影響もあり販売は不調で、開発計画は頓挫している。現状の住民数は9000人程度とみられ、当初計画の70万人には程遠い。
地元不動産業者などによると、17年の時点での販売最低価格は約74万リンギット(当時のレートで約2000万円)だったが、筆者が不動産仲介サイトを調べたところ、最も安価で投機用に買われたと思われる1ベッドルームのコンドミニアムが今では26万リンギット台で販売されていた。また、2ベッドルーム以上の高価格帯物件でも同程度の値段で売りに出されているケースも散見された。
不動産業者によっては、1ベッドルームの1フィート(0.09平方メートル)当たりの販売価格が、19年の約1180リンギットから22年には約540リンギットと、半値以下に下落したところもあるという。
先の地元不動産業者によると、「投機用に買ったオーナーは6掛け程度で売りに出している印象」とのこと。中国で不動産バブルが崩壊し経済が低迷する中で、所有者は可能な限り早く処分したい意図があると推測される。
さて、実際のフォレストシティーの様子はどうか。9月某日、シンガポールから直線距離でわずか2キロメートルほどのフォレストシティーへ車を走らせてみると、衝撃の光景が広がっていた。