直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】人材活用術を学べる歴史小説「ベスト5」Photo: Adobe Stock

歴史小説は経営に活きる

“人材活用”こそ歴史から得られる最大の学びです。そこで今村翔吾選による「人材活用術を学ぶための歴史小説ベスト5」を紹介しましょう。

1.『徳川家康』(山岡荘八 著)
徳川家康の生涯を綿密に描いたロングセラー作品。韓国では「大望」というタイトルで翻訳され、ベストセラーとなっています。日本よりも処世術を学ぶ書として政財界で広く読まれていたようで、韓国の朴槿恵(パク・クネ)元大統領も愛読していたといわれています。

2.『武田信玄』(新田次郎 著)
『風の巻』『林の巻』『火の巻』『山の巻』と4巻にわたって、武田信玄の一生を追っています。信玄がどのようにして部下を掌握していったかを知る上では非常によい本だと思います。新田次郎は信玄にも縁が深い長野県諏訪の出身であり、この作品に強い思い入れがあったようです。

3.『雄気堂々』(城山三郎 著)
「近代日本資本主義の父」と評される渋沢栄一が主人公の小説です。城山三郎は「経済小説」という分野を開拓した第一人者であり、経済人の生涯を学ぶ上でおすすめの作品がたくさんあります。名古屋出身の経済人たちを描いた『創意に生きる 中京財界史』なども一読をおすすめします。

4.『世に棲む日日』(司馬遼太郎 著)
幕末の長州藩を描いた長編小説。前半では松下村塾で維新の志士たちを育てた吉田松陰の青春時代を描き、後半では門下生であり奇兵隊を結成した高杉晋作の活躍を追っています。人材教育という意味では、いかに情熱を持って人を育てるかを学びとることができる作品です。

5.『塞王の楯』(今村翔吾 著)
手前味噌で恐縮ですが、合戦を支えた裏方にスポットを当てた作品であることを多方面から評価していただいています。私自身も「裏方を描く」という点を強く意識した作品ですし、職人たちの仕事ぶりや人材活用についても丹念に描きました。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。