2023年4月現在は、「コンテンツ・プロモーション会議」というセクションのもとに番組制作と運用の2つの部署を統合して、すべての映像コンテンツを集約している。
これらの組織再編は、「テレビ局は番組作りだけではもうダメ。作った番組をコンテンツとしてどう運用できるかが勝負」というテレ東の考えを如実にあらわしている。
テレビ局は番組作りだけではもうダメ
2023年3月期決算時に発表した「通期決算補足資料」においても、収益構造改革で「放送」と「アニメ・配信・ショッピング」の割合を22年度の「5:5」から25 年度は「4:6」にすると宣言している。
私がテレビ局に入社した1986年の頃は、テレビ番組は「地上波で放送して終わり」だった。それが1990年代から2000年の初めくらいまではDVD化などの「二次利用」がおこなわれるようになり、配信の出現とともにテレビは番組を作る「creation(創造)」の時代から番組を財産として活用する「operation(運用)」の時代へと移行した。
そうした流れのなかで、クリエイターに求められる能力も「おもしろい番組を作れる」ことではなく、「配信で売れる=再生数が稼げる」企画を生み出すことへと変わっていった。
地上波を主戦場としてきたクリエイターたちは、「視聴率」を獲ることを第一義としてきた。そしてその訓練を徹底的に受けてきた。どうすれば視聴者に見てもらえる番組になるのか、視聴者がおもしろいと思うものは何なのかを常に追求してきた。
だが、徐々に「視聴率を獲るだけでは誉めてもらえない」という風潮が蔓延してゆく。
またテレビという放送文化を意識して番組作りをおこなってきた世代は、「いい番組」作りをしようと心がけてきた。
「いい番組」とは、例えば視聴率は獲れなかったが内容的にクオリティがいいものであったり、社会的に意義があるものだったり、世のなかに影響を与えたり、視聴者の反響が大きかった作品である。
そういう作品を世に送り出すことが私たちのモノ創りマインドのモチベーションとなっていたし、プライドの拠りどころでもあった。