現在の日本の民間放送のテレビ局はすべてが株式会社です。会社を経営してゆくためには営利を追求しなければなりません。そんな生きてゆくための糧の前には、「放送は文化だ」などといったきれいごとは何の役にも立たないでしょう。テレビ東京の元プロデューサーで、現在は桜美林大学で教鞭をとる田淵俊彦氏は、そういったテレビ局の構造が『セクシー田中さん』問題のようなことを引き起こしていると指摘しています。そこで今回は、テレビが「視聴率至上主義」から「マネタイズ至上主義」へと変貌したさまを述べた田淵氏の著書『混沌時代の新テレビ論 ここまで明かすか!テレビ業界の真実』((ポプラ社刊)より抜粋記事を掲載いたします。
テレビの過剰な「金もうけ主義」
動画背信サービスにおいて圧倒的なユーザー数を誇るYouTubeが誕生したのは、2005年。2年後の2007年に日本語対応になって急速に発展した。同時期の2005年には日本テレビ、2008年にはNHKがオンデマンドサービスを開始している。
テレビ東京は、早くから放送からの収入である「放送収入」ではない「放送外収入」、具体的には配信や映像販売という「ライツ事業」の重要性を認識していた。
それは他局より10年以上も設立が遅れたためネット局や視聴率への新規参入がかなわなかったテレ東にとって、「生き残り戦略」とも言えるものだった。
1996年にはすでにデジタル全盛期の到来を見据えて、他局に先駆けライツビジネス部門の一元化に着手している。それまでは二次利用部門をネットワーク局番組推進部、ライツ推進部と映像センター(部分使用販売)に分散し、一次投資セクションはソフト開発局内の映像事業部とソフト事業部が担っていた。これらすべてを統合した「ソフトライツ局」を新設したのである。