ジャニーズに言いなりのテレビ局「明らかな失敗」はなぜ起こったのか?Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

ジャニーズ問題は
戦略論で見ると風景が変わる

 今回は、久しく話題の的となっているジャニーズ問題に関して、モラル面におけるジャーナリズムのあり方を問うのではなく、純粋な競争戦略の観点から考えてみたい。

 具体的に言えば、テレビ局側は本来、タレントらを使う側(買い手)という強い立場でありながら、本来は弱い立場にある使ってもらう側(売り手)のジャニーズ事務所に対して、強く出られない状況が作られている。そして、その状況は、経営学の教科書の一般的な現象として解説できるのだ(すなわち特異な現象ではないということである)。

 こう書くと勘の良い人はすでに何を言わんとしているかわかるだろう。1980年にハーバード・ビジネス・スクール教授のマイケル・E・ポーターが上梓した『競争の戦略』は、経営学を学んだことのある人なら聞いたことはあっても、邦訳にして471ページにもわたる大部の書籍であるため、一般社会人で全部を読み通した人はあまりいないのではないか。せいぜい、「コストリーダーシップ」と「差別化」と「集中」という三大基本戦略を概説書で読み、知っている気になっているというのが実際のところだろう。

 それはさておき、本書は実務的に極めて優れていて、誰でも必ず“使える”箇所がある。それが「第6章 買い手と供給業者に対する戦略」だ。ここでは、買い手と売り手(供給業者)が市場で交渉を行う際の交渉力がどのように決まるか、その要因が明らかにされている。

 その部分を読めば、テレビ局がたとえ表向きに、「ジャニーズ事務所との関係を考え直す」などと言ったとしても、実質的には売り手のジャニーズ事務所に対して極めて交渉力が弱い立場に追い込まれていることがわかる。併せて、そう簡単にジャニーズ事務所との取引を解消するわけにもいかなかった事情も知ることができる。