テレビ局は「ジャニーズ離れ」完全スルー!“解体的出直し”はマスコミにも必要だPhoto:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

「人権」「社会的責任」追及しないの?
テレビはなぜ沈黙

 ジャニーズ性加害問題を調査した再発防止特別チームが指摘した「マスメディアの沈黙」が、国民に対してこれ以上ないほどわかりやすい形で示されている。

 有名企業の多くが、ジャニーズ事務所所属タレントの広告起用の契約更新をしないと続々と表明している中で、テレビ局だけは所属タレントを起用した番組をこれからも続けていくとして、「沈黙」を続けているのだ。

 わかりやすいのは、テレビ朝日だ。9月7日に「タレント自身に問題があるとは考えておりません。これまで通り番組の企画内容などを踏まえ、ご出演頂きたいと考えております」と大手企業と180度異なる独特の企業倫理を発表して以降、13日の10月期改編説明会でもこの方針を翻していない。

 ハリウッドで主流の「エージェント式のタレントマネジメント」ならば、テレ朝の説明もわからんでもない。ハリウッドスターらの仕事は、事務所に所属するという形ではなく、タレントとそれぞれ契約した代理人が、映画やドラマの契約代理交渉を担うからだ。

 しかし、日本は事務所がタレントの卵を採用して、歌や踊りのレッスンを受けさせて育成、事務所の実績とコネで仕事を得てスターにしていくという「従業員型タレントマネジメント」だ。

 事務所は9月13日に「今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」と発表したが、これまで事務所に所属していたからこそ、タレントは恩恵を受けていた側面もあるだろう。その組織に問題が発覚すればともに不利益を被るのは当然だ。

 だから、アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長や経済同友会の新浪剛史代表幹事は、「ジャニーズ事務所と取引をすることは、未成年者への虐待や人権侵害を認める事になる」と言っている。これは「手のひら返し」「いじめ」という次元の話ではなく、社会的責任のある企業としてしごくまっとうな対応だ。

 では、普段は人権だ、企業の社会的責任だ、と偉そうなご高説を垂れているテレビ局は、なぜこのような対応を取らずに「沈黙」を貫いているのか。
 
 いろいろなご意見があるだろうが、筆者はテレビ業界の人々が「二つのムラ社会」にどっぷり浸かりすぎてしまったことが大きいと思っている。