このようなケースからわかるように、地上波視聴率と異なった評価指針ができたことは必ずしもマイナス面だけではないのである。

 また、過剰なマネタイズに関してはこういった考え方もできるのではないだろうか。

 テレビ局が企業として収益を上げられているから、視聴者は「無料放送」を享受できている。過剰なマネタイズに疲弊したクリエイターが会社を辞めてゆく現状も、「商機」という点においてはメリットである。これまで“年功序列的”であった業界に「下剋上」や「逆転劇」が生まれ、若者たちの出番となるチャンスが増えるからである。

 大学を卒業して入社する若者たちはちょうど2000年代生まれに突入した。

 2000年と言えば、Googleが日本語の検索サービスを開始した年である。彼らは私のように仕事をしてきたなかでインターネットが誕生して「それになじんでいった」世代ではない。生まれたときからインターネット環境の真っただ中にいる、いわゆる「デジタル・ネイティヴ」である。

 デジタルを知り尽くし使いこなしている彼らにとっては、「放送にも配信にも適応できる」作品を生み出すことはたやすいことかもしれない。まったく新しいスタイルの映像コンテンツが生まれる可能性は大いにある。

 そんな未来を期待したい。