その結果、疲弊したクリエイターが「このままテレビ局に在籍していると、地上波と配信両方にウケるという“どっちつかずの”作品を作り続けなければならない」と悩み、「それならばテレビ局を辞めて、その時々で放送や配信に合った自分が作りたい作品を作ったほうがよい」と独立の道を歩むのだ。

「マネタイズ」を逆転の発想で観てみる

 ここまでテレビ局の拝金主義かつ妄信的な「マネタイズ」の実態を暴いてきたが、人間に長所と短所があるようにものごとにもマイナス面があればプラス面もある。

 例えば、番組を地上波の視聴率だけで評価するのではなく配信の再生数などの指標を加えて評価するようになったことは、評価の幅を広げたという意味でとてもよいことだ。

 地上波は「他局との競合」という同時間帯における裏環境が大きく影響する。たまたま同じような番組が重なってしまうことも多々ある。

 そういう場合は互いに不幸ではあるのだが、偶然性に左右される評価ではなく配信といういわゆる作品への評価が純粋化される環境でのデータ指標は、クリエイターたちにとってもありがたい。

視聴率が良くなかったのに、社内表彰を受けた

 特に、テレ東のように地上波視聴率においては常に見劣りしていた局には追い風となる。

 テレビ局の上層部からは地上波と配信の「両取り」を要求されるというシビアな面はあるが、現場レベルではもう少し寛容的なところがある。視聴率があまりよくなかったが、配信での再生数を稼いだことで高い社内評価を受けることがあるのだ。

 私がプロデュースを担当した石原さとみ氏主演のドラマ『人生最高の贈りもの』は、正月期間の放送であったことや裏にフジテレビの『教場』という強力コンテンツが来たことによって、地上波リアルタイムでの視聴率はそんなにはよくなかった。

 しかし、配信ではTVerで再生数100万回を超えるなど、テレ東のスペシャルドラマ史上初の快挙となった。そのことで社内表彰も受けた。