だから電動キックボードを見かけると、ドライバーはすごく緊張する。これは自転車もそうなのだが、たとえばまったく後方確認をせずにフラーっと車の進行方向上に出てきたりするので、自転車や電動キックボードが路上に現れただけで、ドライバーはサッと緊張して最大限の警戒態勢を取る。こうした心がけは、接触事故が起きれば一方的に相手を怪我させてしまう立場にいる車の責務といってよい。
しかし、だからといって自転車・電動キックボード利用者側が、自らの身の安全にずっと無頓着でいていいというわけではない。同じ道路を使う者同士、同じくらいお互いのことを気遣って運転できれば美しいと思えるのである。それに、電動キックボードは対車の事故なら被害者だが、対人となれば翻って加害者となる。電動キックボード利用者には、もう一段階高い安全運転の意識を持ってほしいというのが、多くのドライバーと歩行者の願いではなかろうか。
新世代のモビリティとして登場した電動キックボード。その扱いに未成熟な社会がそれを求めては、ただ電動キックボード利用者への負担と要求ばかりが大きくなるように感じられる。だからこそ、行政はそれをサポートするべきである。
たとえば、その是非は別にして、仮に「ヘルメット着用は義務」と決定したら、電動キックボードの運転をハラハラ危ぶむドライバーたちの声は少し沈静化し、電動キックボード利用者の負担を減らすことにつながるはずである。
「健全な路上」を取り戻すため
行政にしてほしいこと
つまり、今電動キックボードが怖がられたり、さらに言うなら嫌がられたりしている環境を作ったのはほとんど行政の仕業なので、ぜひ是正されたい。
先に紹介した警察庁のデータでは6カ月の間に死亡事故がなく、事故件数も85件とそこまで多くないように思えるのだが、この結果にはドライバーたちの気遣いがそれなりに寄与していると見ている。ドライバーのその姿勢に依存することなく、危険を回避することのできるルール・仕組みづくりが実現されれば、「道路上の平和は行政を含めた全員で協力して達成した」ということになって、めでたしめでたしの大団円となる。
なお、電動キックボードの話なので主にそれについてばかり書いたが、暴走行為や危険運転をする車も昔から後を絶たない。こちらは歴史が長いため、だいぶ慣れっこになってしまったとはいえ、やはり許されるべきものではない。交通ルールが醸し出す優しさも厳しさも、車と電動キックボードに平等に降り注いでくれれば、交通安全と譲り合い精神の実践に一層身が入るのではないかと、個人的には思っている。