多くの人が『人との対話』に苦手意識を抱いている。できればすべてメールですませたいという人すら。残念ながら「人と話すこと」をゼロにはできない。仕事となればなおさら。いったいどうやって克服すればよいのだろう。
答えは実はシンプル、あなたの発するひと言を変えるだけだ。周囲を緊張させたり、気持ちを萎えさせたりするNGな言葉から、その場の空気をあたたかくするひと言、自然な会話を生む言葉へと切り替えてみよう。
そこでいま話題を呼んでいるのが、3万人に「人と話すとき」の対話術を指導してきた人気ファシリテーション塾塾長の中島崇学氏の著書『一流ファシリテーターの 空気を変えるすごいひと言――打ち合わせ、会議、面談、勉強会、雑談でも使える43のフレーズ』だ。
今回は、同書から特別に抜粋。時間通りに終わらせたい対話を最高な形で進められるひと言を紹介する。
全員、「早く終わってほしい」と願っているが…
みんなが集まって何かを始めようというとき、「このひと時が永遠に続いてくれたら」と考えている人はほとんどゼロです。誰でも、願いは同じ。
「時間内に終わらせたい。なんなら早めに終わってほしい」
ところが実際に始まると、多くのミーティングはズルズル長引くようです。
あるいは、「時間厳守!」に意識が集中するあまり、十分に話し合えないこともあります。
×「時間内に終わらせたいので、よろしくお願いします」
このひと言は一見良さそうですが、「時間内に終えること」が参加者の目的になってしまうので、避けましょう。
大切な「質を高める言葉」
時間と質は、両立させるのが当然のこと。
いくら時間どおりに終わっても、「みんなが納得しない」「何も決まっていない」のでは、ゴール前でリタイアしたのと同じです。1時間予定の会議が50分で終わったとしても、その50分は参加者全員にとって「ムダな時間」になってしまうでしょう。
そこで、時間の話をするときは忘れずに、質の話も加えることをおすすめします。
〇「限られた時間を有効に使いましょう」
これだけでも、相手の心の中には、質を大切にする気持ちが芽生えます。
さらに、おすすめしたいのが、オープニングで大前提を宣言すること。
○「どんなにたくさん意見が出ても大丈夫です。私たちは、必ず時間内にゴールに到達できます」
大事なのは「どんなにたくさん意見が出ても大丈夫」というところ。
「どうぞどうぞ、時間を気にせず、言いたいことは全部言っていいんですよ」
受け身の態度が不信感を生む
このように相手の都合を優先させることで、度量の広さを感じてもらえます。それだけでなく、とても安全・安心な雰囲気になって意見が出やすくなります。そうすると非効率な沈黙や様子見の時間がなくなり、むしろ効率も上がります。
多くの人は、時間と質をゼロサムで考えすぎです。
会社の場合、多くの会議や打ち合わせは「仕事だから」「出席しろと指示されたから」というもので、参加者は受け身の姿勢になりがちです。また、会議そのものにさほど価値を見いだしていないことも多いようです。そんなときに「時間内に終わらせる」だけでは、「そもそも会議に価値がないのだろう」という不信感の空気が漂います。
タイパとコスパを両立させる「宣言」
不信感はやがて依存心に変わり、最終的には被害者意識になります。
「ならば時間のムダだ、黙って聞いてればいい」
いくら良い内容でも、参加者に主体性がなければ意味がないのです。
そこで「どんなにたくさん意見が出ても大丈夫」というひと言を放つと、相手は「この場で大切なことは私たちの意見なんだ」と自分事としてとらえ、さらに「思う存分話していい」と安心し、参画意識が高まります。同時に、進行役の度量の広さも示せるので、味方になってもらえます。
限られた時間を有意義に過ごしたい。これは万人の願いです。ですから参加者を信じてハイクオリティを目指すと明言すると、みんな集中して時間を有効に使おうと考え始めるのです。コスト・パフォーマンスとタイム・パフォーマンスは両立できます。