人の上に立つと、やるべき仕事や責任が格段に増える。メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理など、プレーヤー時代とは異なるタスクが多く発生し、はじめは「何から手をつければいいのだろう…」と戸惑ってしまうだろう。
そんな悩めるリーダーたちにおすすめの書籍が、株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏の著書『とにかく仕組み化』だ。これまでのシリーズ『リーダーの仮面』『数値化の鬼』でも「自分のやるべきことが見つかった」「日々の仕事に役立ちすぎる」「何度読んでも言葉が深く刺さる」など、多くの賛同の声を集めた。そんな大人気シリーズ最新刊の本書では、「人の上に立つためには『仕組み化』の発想が欠かせない」というメッセージをわかりやすく説く。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、「管理職に向いていない人が口にする言葉」をご紹介する。(構成/種岡 健)
属人化を生み出す「リーダーの末路」
人は、放っておくと、「属人化」します。
それは、本能だからです。
「あなたがいないと困る」という状態をつくってしまうのは、自然なことなのです。
だからこそ、その誘惑に「理論」で打ち勝たないといけません。
自分が活躍し、他の人が追いつけない状況をつくったほうが、個人はトクをします。
スキルを囲い込むプレーヤーが現れるように、管理職の中でも似たようなことが起こります。
たとえば、10人の営業を束ねているマネジャーがいるとしましょう。
そのチームで売上を達成することが、マネジャーの役割です。
社内のルールで、「飛び込み営業は禁止」にしているとしましょう。
しかし、そのマネジャーが治外法権をしてしまうのです。
「社内のルールでは禁止になっているが、売上目標を大きく上回るために、飛び込み営業をOKとします」
などと伝え、独自のマニュアルを用意してしまいます。
ここまで大胆ではなくても、各個人に「上には内緒でいいからさ」と、小さいレベルで組織に背くことぐらいはあるのではないでしょうか。
そうやって、メンバーを囲い込むのも、放っておくとやってしまう「属人化」の悪い例です。
度々、食品偽装がニュースになりますが、それは、こうしたマネジャーの属人化した管理がエスカレートしてしまったからです。
その後、良心の呵責に堪えかねたメンバーによる「密告」によって、それが判明し、「責任をとって辞める」「会社の信頼を下げる」という末路を迎えるのです。
「属人化を壊す」という覚悟
マネジャーは、属人化を壊す存在でないといけません。
自然状態になるプレーヤーを、仕組み化する立場です。
数字で管理する。ルールを決める。
すべて、自然に逆らって社会を形成することが前提になっています。
これを否定する人もいるでしょう。
「成長しなくてもいい」と決めている人です。
そういう人は、人の上に立ってはいけないのです。
自然状態を認めるマネジャーは、一見、優しいように見えるかもしれません。
しかし、個人や会社の成長を止めている存在です。
優しさの裏側は、残酷です。
何も言わない人は、優しいからではありません。
見捨てているのです。
その結果、プレーヤーは自然状態になり、マネジャーは既得権益を享受します。
それを食い止めるための「仕組み」が必要なのです。
「管理職に向いているかどうか」を試す質問
では、最後に「質問」です。
質問:あなたは「ここだけのルール」を許していないでしょうか?
いかがでしょう。
どんなに些細なことであっても、
「上には内緒でいいから」
「ここだけの話にしておくから」
と、組織に背いてルール設定がおこなわれることは避けましょう。
1人の課長が、
「うちの部長はダメだよね~」
と、部下を囲い込んでしまうと、一気にその組織は弱くなります。
組織の中にいる一員として、歯車であることを再認識してください。
(本稿は、『とにかく仕組み化』より一部を抜粋・編集したものです)