職場の上司と部下のいい人間関係は、「言葉」と「話し方」で決まるいい人間関係は、「言葉」と「話し方」で決まる。心理的安全性を高めるための「話し方」の具体的なフレーズとは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「心理的安全性」という言葉をご存じでしょうか?今、「企業や組織の円滑な発展に欠かせない概念」として、世界的な注目を集めているキーワードです。そこで今回はサイコロジー・クラブ編の『100ページで人を動かす! 心理戦』(青春出版社)から心理的安全性を高める言い回しについて抜粋して紹介します。

イノベーションが起きる組織の共通点とは?

 近年注目を集める、「心理的安全性」。これが保たれている企業や組織は成長し、保たれていない企業や組織は衰えていくというのです。心理的安全性は、英語では「サイコロジカル・セーフティ」。簡単にいうと、会社などの組織、あるいは対人関係のなかで、「自分の考えや気持ちを、安心して発言できる状態」のことです。

 たとえば、「心理的安全性が高い職場」といえば、誰もが、役職や年齢、性別に関係なく、周囲の反応を恐れたり、恥ずかしいと感じたりすることなく、意見や質問を口にできるオープンな職場を意味します。

 この概念を最初に提唱したのは、アメリカ・ハーバード大学のエイミー・エドモンソン教授(組織行動学)でした。1999年のことで、彼女は「心理的安全性が高い状態」を次のように定義しました。

(1)チームの他のメンバーが、自分の発言を拒否したり、罰したりしないと確信できる状態。

(2)メンバー間で、このチーム内では、発言や指摘によって、人間関係の悪化を招かないという安心感が共有されている状態。

 そうした心理的安全性の高い環境なら、みんなが意見や質問を率直に口にでき、それが業務改善策や新しいアイデア、ひいてはイノベーションにつながると提唱したのです。

 この概念が大きな注目を浴びたのは、彼女の発表から17年後の2016年のことでした。IT企業のGoogleが、「生産性が高いチームは、心理的安全性が高い」という研究結果を報告し、世界的な注目を集めるようになったのです。

 Googleでは、2012年から2015年にかけて、成功するチームの必要条件を探る調査を行いました。社内の多数のチームを調査対象とし、より生産性の高い働き方をしているのは、どのようなチームかを調べあげたのです。

町工場を世界的企業へと成長させた「心理的安全性」の力

 約4年間かけたその調査によって、「心理的安全性が生産性に直結する」ことを確かめたのです。そして、心理的安全性が高いことには、次のようなメリットがあったと報告しました。

 まずは、コミュニケーションが活発になることです。すると、情報やノウハウがメンバー間で共有化されるので、チーム全体のスキルがアップし、目標達成率も上がります。

 また、仕事に安心して集中できるため、業務が効率化し、業績がアップします。

 さらに、どのような意見を言ってもいいという安心感から、斬新なアイデア、創造的な発想が出やすくなり、イノベーションが起きやすくなります。加えて、ストレスが減って、メンバーのメンタルヘルスの状態がよくなるため、離職率が低くなり、優秀な人材の流出を防げる──というようなメリットがあったのです。

 つまり、「言いたいことが言える」風通しがいい状態が、アイデアを生み出し、スキルを向上させ、イノベーションの可能性を広げたのです。

 振り返ってみれば、これは、かつてのソニーやホンダのような企業風土といっていいでしょう。ソニーの創業者の井深大氏は、同社の前身の東京通信工業の設立趣意として、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を掲げました。また、かつてのホンダの企業風土は「ワイガヤ会議」という言葉に象徴されていました。平社員から社長(本田宗一郎氏)まで、役職や年齢に関係なく、平場でワイワイガヤガヤと話し合う──それがワイガヤ会議でした。

 そうした風通しのいい=心理的安全性の高い環境から、2つの町工場は、イノベーションを繰り返しながら、世界企業へと成長したのです。

いい人間関係は、「言葉」と「話し方」で決まる

 では、どうすれば、心理的安全性の高い環境をつくることができるのでしょうか? 研究によると、次のようなことが重要とされています。

 まずは、当然ながら、「みんなが話しやすい雰囲気をつくる」ことです。そのためには、メンバー同士、とりわけ上司が部下の話に対して、耳を傾ける姿勢が必要です。

 次に、「みんなが自由に発言できる環境を整える」ことです。たとえば、朝礼で、役職が上の人ばかりが話すのではなく、メンバー全員が均等に発言できるような機会を設けることが必要です。

 また、「ネガティブな言葉を控え、前向きの言葉を使う」ことが大切とされます。それによって、チーム全体が前向きな気持ちで、仕事に取り組めるようになるのです。

 というように、心理的安全性を高めるには、円滑なコミュニケーションが必要であり、「話し方」や「言葉づかい」がカギを握っています。心理的安全性を高めるための「話し方」の具体的なフレーズを紹介していきましょう。

さりげないひと言で、意見をいいやすい雰囲気をつくる

×誰か意見はありますか? → ○~さんは、これについてどう思いますか?

 心理的安全性を提唱したエドモンソンは、「心理的安全性が下がる理由」のひとつとして、「邪魔をしていると思われる不安」をあげています。「自分が発言すると、相手の話の邪魔をしていると思われないか」という不安を抱いて、発言しなくなる心理傾向のことです。そうして「無口な人」が増えれば、新しいアイデアは出なくなり、イノベーションは遠ざかります。

 そこで、リーダーや会議の進行役は、あまり発言しない人の言葉を引き出す必要があります。そのシンプルな方法は、「~さんは、これについてどう思いますか?」や「他の方にも伺ってみましょう」と、話を振ることです。「経験豊富な~さんから一言、伺いましょう」と、相手をおだてながら聞いてもいいでしょう。

 そうすれば、議論はさらに活発になるでしょうし、多くの人の意見を聞いておけば、会議後、フラストレーションが残ることも少なくなるという効果があります。