おすすめポイント
「億り人」という言葉に象徴されるように、資産1億円の達成は個人投資家のひとつの到達点だ。しかし、文字通り桁外れの金額に、そこに至る道筋をイメージできない人も少なくないだろう。
ところが本書の著者であるライオン兄さんこと山口貴大氏は、2024年から始まる新NISAを利用すれば、1億円はけっして不可能な数字ではないと呼びかける。NISAとは、端的に言えば運用益を一定額まで非課税にしてもらえる、投資用口座のことだ。新NISAでは元手1800万円までであれば、投資でいくら利益を出しても税金を払わなくてよい。これを利用して、定番のつみたて投資をしていけば、利益を控えめに見積もっても老後には総計1億円を受け取ることができる計算になる。この状況が作り出せれば、老後も安心して迎えられるというものだろう。
投資の入門書では、インデックスファンドへのつみたて投資、いわば「ほったらかし投資」が定番であるが、本書の特徴はその切り崩し方の試算例も豊富に掲載していること、そしてただの「ほったらかし」からの卒業を促していることにある。投資の最終目標はお金を増やすことではなく、増やしたお金を使うことである。資産の切り崩し方がわからなければ、人生の終盤に大損をしてしまうことになりかねない。そうならないためには、ただのほったらかしで終わらずに、金融リテラシーを身につける必要がある。新NISAをきっかけに投資を始めようとする人にも、すでに投資を始めている人にも、学びの多い一冊になるはずだ。(池田明季哉)