高配当&高成長!新NISAで狙う日本株#1

新NISAの「成長投資枠」では日本株の個別株投資も検討したい。インフレ転換、東証の市場改革、ROEの向上……、日本株には追い風が吹いているからだ。ただし、全体相場が堅調でも株式投資でもうけるのは簡単ではない。特集『高配当&高成長!新NISAで狙う日本株』(全20回)の#1では新NISAの概要と、税制優遇のある「新NISA特有の落とし穴」について解説する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

非課税枠が拡大した新NISA
「オルカン」だけで満足できる?

「インフレに負けずに資産を増やしたい」「老後資金を確保したい」――正月気分が完全に抜け切らない1月14日、日曜日の午前中にもかかわらず、楽天証券主催の「新春講演会2024」のセミナー会場は熱気に包まれていた。

 世界的な株高に加えて、2024年から「新NISA(少額投資非課税制度)」がスタートしたことで、個人投資家の「熱」が高まっている。実際、楽天証券の今年初めから1月14日までの口座開設数は「前年同期比で3倍程度」(楽天証券の楠雄治社長)に増えているという。

 書店には「新NISA解説本」がズラリと並び、普段は投資と無縁のワイドショーでも何度も新NISAが取り上げられている。それだけ注目度の高い新NISAであるが、まずは簡単に制度について説明しておこう。

 通常、株式投資や投資信託の利益や配当には20.315%の税金がかかるが、NISAでは値上がり益や配当金が非課税になる。ただし、従来のNISAは非課税期間が限定されているなど、使い勝手が悪い部分があった。

 一方、新NISAでは非課税期間が恒久化され、非課税保有限度額も大幅に拡大された。関係者が「満額回答以上」と言うほど、個人投資家にとって使いやすい制度に改善されたのだ(詳細は下図参照)。

 新NISAの特徴は年間120万円の「つみたて投資枠」と年間240万円の「成長投資枠」という二つの非課税枠があることだ。

 つみたて投資枠では「長期、分散、積み立て」という資産運用の王道に適しているとされる投資信託が購入できる。もう一つの成長投資枠ではつみたて投資枠で買える投信を含む投資信託に加えて、日本株や上場RIET(不動産投資信託)、外国株も投資対象となる。

 つみたて投資枠では、基本的には低コストの投資信託を積み立てていくのがいいだろう。人気があるのは全世界の株式に低コストで分散投資できる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、いわゆる「オルカン」である。

 では、成長投資枠で何を買うべきか。つみたて投資枠と同様に投資信託でもいいのだが、高いリターンを狙うのであれば、日本の個別銘柄にも注目したい。

「なぜ日本株が有望なのか」については、本特集#7『「劣等生だった日本株が変貌しつつある!」資産合計250億円超の凄腕個人&凄腕プロが徹底分析【鼎談前編】』などでも詳しく解説するが、端的に言えば日本株は確実に変化しつつあるからだ。

 実際、直近5年間で日経平均株価が55%上昇したのに対して、株価が5倍以上になったのは20銘柄。トヨタ自動車や三菱商事など超有名企業も含めて、2倍以上になったのは200銘柄以上もある。好業績の高配当株や増配株も多く、気になる銘柄がきっと見つかるはずだ。

 ただし、全体相場が堅調なことと、個人投資家がもうけられるかは別問題だ。今回の取材では、昨年後半からの上昇相場に乗り切れていない個人投資家の声も聞いた。

 そこで、次ページでは新NISAで日本株を狙う場合の「落とし穴」について解説。税制メリットが大きい新NISAだが、従来の株取引(特定口座)にはなかった落とし穴も存在する。また、人気上昇中のあるジャンルの株に関しては、新NISAでは明確なデメリットがある。新NISAを上手に使う意味でも、初心者はもちろん、中級者もぜひチェックしてほしい。