「こんなに利益が出たのに、手元に残るお金はわずか」
経営者なら、誰しも一度はこう思うはずです。だからといって、小手先の節税に躍起になってはいけません。会社のお金を1円でも多く残し、そのお金を会社の投資にまわし、会社をより成長させる。それこそが経営者の仕事です。
本連載は、「1円でも多く会社と社長個人にお金を残す方法」を学ぶものです。著者は、財務コンサルタントの長谷川桂介氏と公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏です。インボイス制度、各種法律に完全対応の『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』の著者でもあります。経営者の超リアルなお金の悩みに対し、あますところなく解決策を提示した1冊になっています。
節税しながら、退職金を貯めよう!
小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主のための退職金積み立て制度です。掛金は全額が所得控除の対象になります(正式には「小規模企業共済等掛金控除」といいます)。
仮に、月額最大の7万円を1年間掛けた場合、7万円×12ヵ月=84万円分の所得控除を受けられます。退職金を積み立てながら、さらに年間84万円も課税所得を減らせるわけです。
それでは、どれくらい税金を減らすことができるのか。下図「掛金ごとの節税額一覧表」を見ながら説明していきましょう。
たとえば課税所得1000万円の人が、年84万円を積み立てた場合、1年間で36万7000円の節税ができます。いずれは退職金として戻ってくるお金の積み立てでこれだけ節税効果があるのですから、とても魅力的です。
さらに小規模企業共済は、1年以内の前納もできます。今年分と翌年分を合わせて、最大168万円の所得控除を得ることも可能になるのです。逆に、経営が苦しいときには「掛金を1000円まで減額する」といったこともでき、柔軟性が高いといえます。
注意点
ただし、デメリットもあります。小規模企業共済の掛金は、予定利率1%で運用されることで、掛金以上のお金を受け取ることができるのですが、掛金を減額した場合、減額以前に積み立てた掛金の差額は運用されません。
たとえば、月1万円の掛金を3年間払ったとすると、合計36万円が予定利率1%で運用されます。しかし4年目から掛金を1000円にした場合、減額以前に積み立ててきた掛金の差額の9000円は運用されずに放置されます。具体的には、9000円×36ヵ月、つまり32万4000円の運用が放置されるのです。余裕のある金額から積み立てていくのがベターです。
(本原稿は『今日もガッチリ資産防衛――1円でも多く「会社と社長個人」にお金を残す方法』から一部抜粋、追加加筆したものです)