チャンクを連ねて話す英語ネイティブの感覚
ブラッド・ピットのトークショー発言で学ぶ
日本人は英語を話そうとするとき、頭の中で英作文のように単語を一語一語並べ、最後のピリオドまで完成してから口を開こうとする。そうなってしまうのは、普段触れる英文が「完璧な文章」ばかりだからかもしれない。
教科書など英語学習関連本をはじめ、ニュースキャスターの語り、TEDトーク、映画やドラマのせりふなどは、前もって作られた文章なので完璧なのは当たり前だ。
しかし、実際の会話は、完璧な文章ではないことがしばしばある。なぜなら、英語ネイティブは「導入チャンク」を瞬発的に口にした後、「パーツとなるチャンク」を追加しながら先を続けていく話し方をするからだ。
具体例を見てみよう。米国の超人気トークショー「ラリー・キング・ライブ」での俳優ブラッド・ピットの発言だ。司会のキングが、ハリケーン・カトリーナで最大の被害を受けたニューオーリンズのLower Ninth Ward(第9地区)の復興のためにブラッドが設立した非営利団体について尋ねている。※チャンクごとに下線を引いたが、これ以外にもチャンクの区切り方はある
KING: OK. So, first of all, isn’t it a blight on somebody ― city, state, federal ― that this Ninth Ward ain’t any better?
キング:まず、この第9地区が全く改善されてないってのは、誰か―市や州、連邦政府―にとって痛手なんじゃないのかね?
PITT: Well, no question. I mean but it ― you know, the Ninth Ward has got a lot of attention. And we’re starting here because it seems to have the least ― or the most difficulty of coming back. But this is ― this is everywhere. You ― to see the extent of the damage and the extent of the people ― the extent of the lack of movement is ― I mean, this goes on for parish after parish after parish.
ピット:まあ、全くその通りです。つまり、でも―ほら、第9地区は大いに注目されています。僕たちがこの地区から始めているのは、この地区が最低の―というか最も復興が難しそうだからです。でも、これは―これはどこも同じなのですよ。あなた―被害と人々の大きさを見ると―人々の動きのなさの大きさを見ると―つまり、この状況は次々と行政区を行けども行けども続いているのです。
どうだろう、完璧な文章には程遠いことが分かるはずだ。アウトプットの処理単位は、単語単位でも文全体でもなくチャンク単位。一言で言えるような短文以外は、文の終わりは見えていないまま見切り発車している。だから、日本語に翻訳するのも非常に難しい。
言いよどみや言い直しが多く、to see the extent of the damage~は、途中で文法の整合性が取れなくなっている。しかし、個々のチャンク内では正しい文法で完結し、発言全体としては意味が通るように話している。
このように英語は本来、「完成品」をいきなり提示するのではなく、より小さな意味の固まりであるチャンクをリアルタイムにつなげながら口にしていくものなのだ。
記事の後編では、そもそもチャンクとは何か、チャンクで学ぶメリットを押さえた後、市販のTOEIC対策本を使ったチャンクの効果的な学習法を紹介する。せっかくTOEICで高得点を目指すなら、その学習をリスニングやスピーキングにも役立てよう。