人々の縁を結んで幸せにするはずの、結婚相談所の倒産が急増しているという。新型コロナウイルス禍が落ち着き、「対面での婚活」が再開したにもかかわらずだ。その背景には「マッチングアプリの台頭」「価格競争の激化」があると指摘されているが、本当にそれだけなのか。独立系コンサルの現役経営者が、さまざまなデータをひもときながら真因を究明する。(森経営コンサルティング代表取締役 森 泰一郎)
顧客を「幸せにする側」のはずが…
「結婚相談所の倒産」急増の悲哀
先日、「結婚相談所の倒産件数が急増している」という興味深い統計を目にした。
2024年2月6日に帝国データバンクが発表したデータによると、2023年に倒産および休廃業した結婚相談所の数は22件に達し、過去最高となったという。
しかも、2022年の14件、2021年の10件という件数から大幅に増加している。対面での婚活が難しかった新型コロナウイルス禍の真っ最中ではなく、当時よりも感染拡大が落ち着いた今になってから倒産が急増したのだ。
帝国データバンクは、その要因を二つ挙げている。一つは、近年台頭してきたマッチングアプリが大きな脅威となっていること。もう一つは、婚活イベントの告知などに多額の広告費が必要な半面、基本的なサービス内容では他社との差別化が難しく、価格競争が激化していることだ。
だが、本当にそれだけなのか。他に要因はないのか。経営コンサルタントの目線で検証していきたい。
ちなみに、本連載では調査結果を扱うことがよくあるが、筆者がこうした資料を参照する際のスタンスは「倒産件数は事実だが、倒産理由はあくまで推測にすぎない」というものだ。
もちろん調査元は国内最大級の信用調査会社であり、倒産情報を扱うプロである。彼らの分析結果は一理あるが、見方を変えれば新たな倒産理由が浮かび上がってくることもある。だからこそ、冷静に分析する必要があるということを付け加えておこう。
それでは本題に入る。そもそも婚活業界に限らず、コロナ禍が落ち着いてから倒産数が増加している業界が多いということを忘れてはいけない。