「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。

名著『アイデアのつくり方』を紙1枚でまとめてみたら、決定的に足りないものがわかったPhoto: Adobe Stock

アイデア創出の本質は「早めの着手」

 1冊目は『アイデアのつくり方』を選びました。

 著者は、アメリカ広告代理業協会の会長などを務めたジェームス・W・ヤングという人で、1940年の刊行以来、80年以上にわたって読み継がれている名著です。広告代理店勤務の人はもちろん、アイデア勝負の仕事をしている人なら「とりあえずこれ読んどけ」といって真っ先に紹介される本です。

 この名著を紹介することが、今回のブックガイドの狙いやイメージをつかんでもらううえで最もわかりやすいと判断したため、最初に取り上げることにしました。

『アイデアのつくり方』はわずか100ページ程度の小著なので、1冊読み切ること自体は難なくできる分量です。

 一方で、本書のフォーカスは「読んだことがあるか?」でも「内容を理解しているか?」でもありません。「読んだ後、使えているかどうか?」です。どうか、これから紹介する読み解きや実践と、自身のそれとを読み比べてみてください。

 おそらく多くの読者さんが「あれ、何だか自分の読解とは違うぞ」「なるほど、こう読めば活用できるのか!」といった感想を抱いてくれるはずですし、そう感じられれば、今後も有意義な読書体験になることをお約束します。では、いきましょう。

『アイデアのつくり方』は私の知的生産のベース書籍となっています。

 たとえば、「はじめに」でも触れた動画学習コミュニティで毎週のように1時間前後の新作講義を配信しているのですが、こんなことを5年以上も続けられている理由は、『アイデアのつくり方』で学び取った本質を習慣化することができているからです。

 また、本書は私にとって11冊目の本となりますが、毎年のように新刊を出し続けられている理由もまた、これから紹介する「アイデアの本質」が身についているからです。

 その本質とは……、いったい何だと思いますか。

 図01は『アイデアのつくり方』を「読んだ後」に、本から得た学びを私なりに「1枚」にまとめたものです。

名著『アイデアのつくり方』を紙1枚でまとめてみたら、決定的に足りないものがわかった

 1冊目なので以降の本より丁寧に解説していきたいのですが、この「1枚」要約は3つの要素で構成されています。

1.読書で得た学びを「1P=ヒトコト」でまとめて赤ペンで記載
2.「1P」に関する「What・Why・How」3つの質問を
緑ペンで記載
3.各問いの答えについて、「3ポイント以内」で収まるように
青ペンで記載

 以上の3つの要素をカバーしながら「1枚」にまとめておくことで、次のような読み解きが可能になります。

 以下、プレゼン風にまとめたので、読書会か何かで発表を聴くようなイメージで読み進めていってください。

『アイデアのつくり方』を読んで私なりに得た最大の学びは、「よいアイデアを出したかったら、とにかくさっさと着手すること」です。(※ここまでが「1P(1Phrase)?=ヒトコトでまとめると?」に対応)

 どういうことか。まずこの本では「アイデア=新しい組み合わせ」と定義されています。これは、要素自体は既存の情報や知識でも構わない。大切なのは、「組み合わせ方の新しさ」にあるという意味です。

 また、アイデア創出の方法として5ステップ紹介されていますが、4つ目の「エウレカ」が「アイデア誕生」となっています。ということは、「アイデアが浮かぶようになりたい」という目的で読むなら、3ステップまででOKだと捉えてみてください。これで、覚える要素を減らすことができます。

 実際にはそれぞれ、ステップ1が「組み合わせの材料となる情報の大量インプット」。ステップ2が、「いろいろと組み合わせてみる=咀嚼(そしゃく)」のフェーズ。

 最後のステップ3が、「行き詰まったらいったん離れ、何か思いつくまで待ち続ける=孵化(ふか)」させる段階です。

 このうち、最初の「大量インプット」と3つ目の「孵化」の段階では、いずれも「できるだけ潤沢な時間」が必要となります。だからこそ、「さっさと着手すること」がアイデア創出の必須条件になってくるわけです。(※ここまでが、「What=どういう意味?」に対応)

 なぜ、この学びが重要なのか。私自身、この本を読むまでは「アイデア」と「時間」には密接なつながりがあると認識できていませんでした。

 たしかに、時間がなければアイデア創出のための大量インプットが不十分になり、「無い袖は振れない」状態に陥ってしまいます。

 あるいは時間をかけなければ、アイデアが孵化する前に期日になってしまいかねません。だからこそ、「アイデア創出=潤沢な時間確保=早めの着手」なのです。(※ここまでが、「Why=なぜ、この本質が重要?」に対応)

 では、この学びをどうやって日々の知的生産に活かすのか。

 最大のカギは「早めの着手」ですから、「アイデア力」と言いつつ、まずは「ダンドリ力」を高めて時間を確保することが最優先事項となります。

 そのうえで、組み合わせの材料を豊富にストックするべく、「情報インプットのスキル」も高めていかなければなりません。

 加えて、寝かせたり放置したりする時間が孵化には不可欠なので、たとえば「金曜日や有休の前日にこそ、アイデア創出のステップ2情報の咀嚼までをやっておいたほうがよい」といった仕事術も、それこそアイデアの1つとして有効なのではないでしょうか。実際、休暇中に突然アイデアが浮かぶことも多々ありますので、休みとはいえ、何かしら記録できる手段は持ち歩いたほうがよいということになります。(※ここまでが、「How=どうやってこの学びを実践する?」に対応)

 次回、「読んだ後にどう活用するか?」について、お伝えします。

(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』の一部抜粋したものです)