「『彼女いたことがない人しかわからないことは?』の秀逸すぎる回答は…」
そう語るのは、これまでX(旧Twitter)上で8年間365日、毎日欠かさず大喜利のお題を出題し、累計で200万以上の回答を見てきた「坊主」氏だ。いまや空前の「大喜利ブーム」。大喜利のように「斜め上の発想を出す」というスキルは、「面接での一言」「LINEでのうまい返し」「意中の相手を口説く言葉」「新企画のアイデア」などに使える“万能スキル”でもあるのだ。そんな大喜利について、世界で初めて思考法をまとめた話題の著書『大喜利の考え方』では、「どうすれば面白い発想が出てくるのか」「どんな角度で物事を見ればいいのか」などを超わかりやすく伝えてくれている。まさに「面白い人の頭の中」が丸わかり。そこで、この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、大喜利的な思考法を詳しく解説する。(構成/種岡 健)
「ミスリード」させる技術
「伝え方」が上手な人は、「フリとオチ」をうまく使いこなしています。
「フリ」を付けるというのは、最初に相手を誤解させる行為です。
なので、真面目すぎる人は苦手かもしれません。
「タバコ吸ってもいいよ。でも、吐くのはダメね!」
というように、最初の「タバコ吸ってもいいよ」という一言目は、厳密には「ウソ」になります。
ウソをつくことに抵抗がある人は苦手でしょう。
だからこそ、「フリとオチ」という技術を学ぶ必要があるのです。意識しないとできません。
そして、大喜利はその練習の場としてふさわしいのです。
ここで、フリが効いた回答を紹介しましょう。
〈お題〉
「彼女いたことがない人しかわからないことは?」選手権
〈最優秀賞〉
一つ下の彼女は、いる。
次元が
最初の「一つ下の彼女は、いる」が「フリ」になっていますね。
ここで一瞬、「年齢かな?」と思うはずです。
そこに対して、「次元が」という「オチ」がついています。
こうやって「ミスリードさせる」のは、笑いのテクニックとしては基本中の基本です。
ちなみに、「次元」というのは、「三次元の彼女はいないが、二次元の彼女(アニメや漫画の中)は、いる」という意味ですね。
もちろん、「次元が一つ下の彼女がいます」という言い方でも回答になるのですが、それでは面白さが弱くなることがわかると思います。
最初のフリで「年齢が一つ下なのかな?」と勘違いさせることがポイントです。
「日常のミス」はネタになる
日本語は難しいですよね。たとえば、
上司「なんで行ったんだ!」
部下「タクシーです」
上司「手段じゃない! なんで勝手に行ったんだって意味だよ!」
というやりとりは、漫才では基本のテクニックです。
ミステリー映画でも、観客に対して「犯人っぽい人」をわかりやすく描きつつ、まったく予期していない人が犯人だったときに、「そうなのか!」「これは面白い!」と感情が動きますよね。
相手に心の準備をさせつつ、それをオチで裏切る。
そんなシンプルな法則を、ぜひマスターしましょう。
日常生活でも、先ほどのようなコミュニケーションのエラーはあると思います。
たとえば、お正月の義実家で、
姑「(餅の数は)いくつですか?」
嫁「(年齢は)28です」
姑「あら、ずいぶんとお食べになるのね?」
嫁「(しまった……)」
というような気まずい失敗があるかもしれません。
それって、じつはネタになる瞬間なんですよね。
言い間違い、聞き間違い、勘違い……。
その場では恥ずかしいことかもしれませんが、脳内で「ネタになる!」と思ってみてください。
「日本語って難しいですよね~」とフォローしながら、スマホにメモしておきましょう。いつか使えるときがきますから。
「フリ」は多すぎるとウザい
さて、「フリ」については、一つだけ注意点があります。
「多用するな!」です。
それは、ここぞというときに使うから効果的だということです。
たしかに会話がつまらない人は、フリがない。かといってフリが多すぎる人は、会話がウザいです。
フリは一瞬だけ相手を不安にさせる行為なので、いちいちフリを入れると、聞いているほうが疲れるんですよね。
「フリ」というものに敏感になると、そんなコミュニケーションパターンも見えてきます。
(本稿は、『大喜利の考え方』から一部抜粋した内容です。)
日本一の大喜利アカウント
X(旧Twitter)は、2024年1月現在で190万フォロワーを突破。元々、「2ちゃんねる」が大好きで、「匿名で面白い回答をする人がたくさんいる!」ということに衝撃を受け、Xでお題を出し続ける。これまで8年間365日、毎日欠かさず大喜利のお題を出題。累計で2万以上のお題を出し、数百万以上の回答を見てきた。昼は僧侶として働く、正真正銘の「お坊さん」でもある。また、都内に「虚無僧バー」「スジャータ」というBARを2軒経営しており、誰でも1日店長ができる店として、さまざまな有名人やインフルエンサーなどに店長を任せている。BARの名前の由来も仏教からとられている。『大喜利の考え方』(ダイヤモンド社)が初の著書。