「不動産業者は玉石混合。焦らず信頼できるパートナーを探す努力が必要」と語るのは、不動産投資家で空き家再生コンサルタントの吉原泰典さん。今回は、ビジネスパーソンが知らない「ヤバいセールストーク」について解説していただきます。
吉原さんが「空いた実家をそのまま貸せばいい」とお話しすると、「リフォームが必要なんでしょう?」とか「そもそも大都市近郊だと可能な話で地方では無理なんでしょう?」という反応がかえってくることが多いそうですが、「古くても地方でも大丈夫!貸せます」と多くの方が驚かれるそうです。本連載では、「貸すか売るか自分で使うか」判断の分かれ目はどこなのか? なぜ「そのまま貸す」ことがお勧めなのか? などを解説し、「誰もすまなくなった実家」をそのまま貸すためのノウハウを話題の書『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』の中からご紹介していきます。

こんな不動産業者には気をつけろ! ビジネスパーソンが知らない「ヤバいセールストーク」とは?Photo: Adobe Stock

相続登記の義務化で加速する不動産業者の買い叩き

 この4月から相続登記の義務化がスタート。4月1日以降、不動産を相続した人は3年以内の登記申請が義務化され、最悪、過料(罰金)も発生することになります。
 これに伴い、不動産業界は色めき立っています。それは相続を焦った人からの見切り売りを安く買い叩く絶好のチャンスとなるからです。特に、地方の実家、空き家となった実家の相続登記を放置している都会で働くビジネスパーソンは格好のターゲットであり、手ぐすね引いて獲物が来るのを待っていると言っていいでしょう。
 ところがこのことについてマスコミ、識者などからほとんど問題提起や疑問の声が聞かれず、業者の買い叩きが加速しているように思います。

こんなセールストークは要注意

 そこで絶対に気をつけておくべき不動産業者のセールストークについて解説します。まずは、著名人、有名人の名を使った不動産買取業者。一部でよく知られているインフルエンサーや有名人本人、あるいはその背景の名前を使っての買取業者が出現してきていますが、これはかつての有名人の名を語った仮想通貨ビジネスと同じだと思います。

 不動産の取引においては経験とスキル、そして何よりも対象エリアの土地勘が必須です。その著名人・有名人が実家を片付けた、あるいは不動産投資の経験が豊富等ならわかがりますが、何の実績もないのに特定の業者を推奨しているのは、単なる広告塔である可能性が高いでしょう。

誘導尋問にひっかかってはいけない

 次に気をつけるべきは、実際に不動産業者に相談した場合のトークです。多くの不動産業者にとって、実家を売りたいという人は基本的に「鴨がネギを背負って現れた」状態です。それを彼らがどう処理して行くのかといえば、「比較法」を使うのです。
 例えば、「放置しているよりも、売った方が良い」、あるいは「貸すよりも売った方が良い」、と言って売りを勧めてきます。この段階で売りを勧めない場合、その業者はその不動産には値打ちがないと見切っている可能性があります。次に、放置した場合の税金、貸した場合の修繕費を持ち出して、「そんなお金をかけるよりも売った方が良い」との落とし込みを行います。

 人は誰しも右か左か二択を出され、どちらか一つを選べと言われるとあっさり誘導尋問に乗ってしまう傾向があります。
 さらに、他の選択肢を検討したいとなれば「お忙しいでしょうから」と言って、余計な方向に話が進むのを遮断しようとするでしょう。
 こうした比較法のセールストークに出会ったら、必ず、一旦持ち帰って誰かのセカンドオピニオンを聞いてみてください。

修繕費のふっかけに注意

 もうひとつ注意してもらいたいのは、賃貸に出す場合の修繕費の見積もりです。
 空いた実家を賃貸に出したいと言うと、不動産業者はよく修繕費の見積りを出してきます。しかし、これは所有者からの具体的な要望ではないことがほとんどで、時として「これぐらいふっかけてやろう」という算段であることもあります。

 不動産業者には修繕部門や施工部門を抱えているところもあり、年度末等はそちらの売り上げを増やすため必ずしも必要ではない修繕を素人と思しき顧客に提案したりするのです。
 修繕費の見積りについては、どの箇所にどんな問題があり、それに対してどんな修繕が必要で、いくらかかるのか、ひとつひとつ具体的に解明して行くことが必要です。

 都会で暮らしている人が田舎の実家の相談をするのは、不動産業者の格好のターゲットになりやすいことはぜひ覚えておいてください。普通の人が不動産業者に比べて不動産取引の経験が圧倒的に少ないのは当たり前です。不動産業界では往々にして、こうした情報格差(非対称性)を利用したビジネスを目にします。正しい知識と情報を身につけてカモにされないよう自分で自分の身を守りましょう。