「空いた実家をそのまま貸せばいい」とお話しすると、「リフォームが必要なんでしょう?」とか「そもそも大都市近郊だと可能な話で地方では無理なんしょう?」という反応がかえってくることが多いと語るのは、不動産投資家で空き家再生コンサルタントの吉原泰典さん。その質問に対しては「古くても地方でも大丈夫!貸せます」と多くの方が驚かれるそうです。本連載では、「貸すか売るか自分で使うか」判断の分かれ目はどこなのか? なぜ「そのまま貸す」ことがお勧めなのか? などを解説し、「誰もすまなくなった実家」をそのまま貸すためのノウハウを話題の書『「空いた実家」は、そのまま貸しなさい』の中からご紹介していきます。
全国に約850万戸、約7戸に1戸は空き家
今回は、誰も住まなくなった実家の実態とはどういうものなのか、データなどをもとに見ていきます。
まず、5年に一度公表される国の「住宅・土地統計調査」の最新版(2018年)によると、2018年10月1日時点で全国には6240万7000戸の住宅があり、そのうち「空き家」は848万9000戸、総住宅数に占める割合(空き家率)は13.6%に達します。
いまや住宅ストック数(約6240万戸)は総世帯(約5400万世帯)を800万以上も上回っており、それとほぼ同じくらいの空き家があるのです。
日本の人口はすでに2008年頃をピークに減少しており、世帯数についても2023年以降は増加から減少に転じる見込みです。今後、空き家数も空き家率もさらに上昇していくことは間違いありません。
増え続けているのは「誰も住まなくなった実家」
一口に「空き家」といっても実際にはいくつかのパターンに分類されます。
入居者の入れ替えに伴うケースが中心の「賃貸用の住宅」が432万7000戸(総住宅数に占める割合6.9%)、売主が引っ越した「売却用の住宅」が29万3000戸(同0.5%)、別荘などの「二次的住宅」が38万1000戸(同0.6%)、「その他の住宅(その他の空き家)」が348万7000戸(同5.6%)です。
これらのうち私たちが普通にイメージする「空き家」、つまり持ち家(マイホーム)として家族が住んでいたのに、そのうち誰も住まなくなった実家にあたるのが「その他の住宅(その他の空き家)」です。
「空き家」全体では約10年前の調査(2013年)に比べて29万3000戸(3.6%)増えているのですが、実は「その他の住宅(その他の空き家)」は30万4000戸(9.5%)と全体の増加数を上回っています。他の空き家はほとんど増えていないかむしろ減っているのに、「その他の住宅(その他の空き家)」がどんどん増えているのです。
いま問題になっている「空き家」の増加とは、そのほとんどが「その他の住宅(その他の空き家)」、すなわち「誰も住まなくなった実家」によるものなのです。
誰も住まなくなった実家で多いのは「相続した昭和の木造戸建て」
いま増え続けている「誰も住まなくなった実家」とは具体的にはどのような住宅なのでしょうか。その“素顔”を確認してみましょう。
まず、「その他の空き家」の建て方・構造について、統計データによると木造の一戸建てが約7割を占めます。一戸建てでも非木造は5%もなく、アパートやマンションなどの共同住宅は約2割にすぎません。
また、建設時期については4分の3超が1980年(昭和55年)以前に建てられています。
さらに、空き家の取得の経緯は相続が約55%と半分以上を占めています。ここから見えてくるのは、誰も住まなくなった実家の多くは、「相続した昭和の木造戸建て」だということです。
これは多くの人の印象やイメージと合致するものではないでしょうか。地方に行くと駅前商店街にはシャッターの下りた2階建ての店舗兼住宅が並んでいます。大都市圏の近郊にあるニュータウンには雨戸を締め切って「売出中」などの看板のある戸建てが点在しています。そして、これらの多くは木造です。