儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態#8久松農園の畑。GPSを活用して真っすぐに種をまき、機械で除草しやすくする。除草剤を使うより低コストで除草できる

有力農家1230人による投票で決まる「カリスマ農家」のランキングを今年もお届けする。農業が激変期を迎えていることを象徴するように、新星が続々と誕生している。特集『儲かる農業2024 JA農水省は緊急事態』(全17回)の#8では、カリスマ農家に、儲かる秘訣を明かしてもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

ドヤ顔でおすそわけ
野菜詰め合わせで売上高5000万円

 ダイヤモンド編集部の担い手農家アンケートに回答した1230人の農家が選ぶ「カリスマ農家ランキング」2位の久松達央社長が営む農園を4月中旬に訪れた。6ヘクタールの農地で70~100品目の野菜を有機栽培で作っているだけあって、社員たちはてきぱきと、複雑な仕事に取り組んでいた。

 ひときわ大きな声の従業員は、富士通を退社して、4月から久松農園で働き始めた32歳の新入社員だ。この男性社員に限らず、全国から農業を志す若者が集まっている。その理由は、久松農園が、「小さくて強い農業」という旗を掲げ、それを実現しているからに他ならない。

 久松氏は、慶應義塾大学を卒業後、帝人を経て1997年に茨城県で就農した。自給自足や有機栽培といった理想を追い求めたが、経験ゼロからの農業は生易しいものではなかった。栽培に失敗したり、無理して体を壊したり、東京電力福島第1原発の事故で顧客を3割失ったりと苦労の連続だった。

 そうした中でも、久松氏は有機農業でおいしい野菜を生産するための技術を磨き続けた。「多品目栽培なので、どの品目も自分はプロではないと自信を持てない時期があった。だが、最近は全ての品目で他の農家と対等に話ができるようになった。食べたお客さんに喜んでもらえる自信はある」と語る。

 安定して生産できるようになったことで、売上高は5000万円に増え、500万~700万円の利益が出せるようになった。

 次ページでは、カリスマ農家ランキングのベスト18を大公開するとともに、有機農業の多品目少量生産で利益率10%を実現している久松農園の「弱者の戦略」を全解剖する。