国会議事堂Photo:PIXTA

日本の財政赤字が大きいことは誰でも知っているが、なぜそうなってしまったのかについては、皆が正しいと認める答えはない。私の考えは、以前に書いた『アベノミクスの代名詞「大胆な金融緩和」は日本経済に何を遺したか』にあるが、このことを国際比較で考えてみよう。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

データから見える
日本の財政悪化の主因

 図1は、先進7カ国(G7)の名目GDPを1990年=100として推移を示したものである。図から明らかなように、1990年から2023年まで、他国が2.7~4.5倍に増加しているのに、日本は1.3倍にしか増加していない。

 名目GDPが増加しなければ、税収も上がらない。図2は一般政府の政府収入を1990年=100として推移を見たものである。ドイツとアメリカは、データが欠落しているので、ドイツは1991年=100、アメリカは2001年=100として図示している。ここでも日本は、他の国が2.9~4.7倍に増加しているにもかかわらず、1.5倍にしか増加していない。

 ただし、日本は名目GDPが1.3倍にしかなっていないのに政府収入が1.5倍になっているのだから、増税している訳である。

 この増税には、97年、2014年、2019年の3度にわたる3%から10%への7%ポイントの消費税増税が含まれている。1%の消費税増税でGDPの0.5%の税収といわれているので、GDPの3.5%(0.5%×7)分は消費税増税によるものである。

 さらに、社会保険料の引き上げがある。ここでの政府収入は、中央政府・地方政府・年金基金を含めた一般政府のものなので、社会保険料も含まれる。2004年に13.93%だった社会保険料が2017年の18.3%まで4.37%ポイント引き上げられた。ここでの分母はほぼ雇用者報酬で、雇用者報酬はGDPの53%なので、GDP比2.3%ポイント(4.37%×0.53)の増税となる。

 日本の政府収入対GDP比率は1990年で26.4%、2023年は36.7%だから、この期間に10.3%ポイント上昇している。一方、消費税増税分は3.5%ポイント、社会保険料の引き上げ分は2.3%ポイントだから、残りの4.5%(10.3%-3.5%-2.3%)ポイント分は名目GDPが増えたことによる自然増収である。つまり、名目GDPが増加していないので税収が上がらなかったことが、日本の財政悪化の主要な要因であると私は考える。