「うつ病は甘えだ」と勘違いしている人に知ってほしい、うつ病の真実があります。
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
それって「うつ病」のはじまりかも?
「うつ病は気分が落ち込むだけの病気」という誤った認識を持つ人をときどき見かけます。
しかし、うつ病では、精神的な症状に加えて、頭痛、めまい、吐き気や嘔吐など、さまざまな身体症状が現れることがあります。
「ずっと体調が悪い」と感じている人が、実はうつ病であることもあります。
なので、今日はみなさんと一緒にうつ病に見られる特徴について話し合いたいと思います。
「うつ病」はどうやって診断されるの?
うつ病の診断には、世界保健機関(WHO)による「疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版」(ICD-10)の診断基準が用いられます。
この基準では、以下のような精神の症状が持続していることが求められます。
・抑うつ気分
・興味や喜びの喪失
・易疲労感(体を動かしていないのに疲れる)
これらの精神的な不調や気分の落ち込みが続き、精神的苦痛を伴うことで診断されます。
しかし、うつ病には上記の症状以外にも、さまざまな身体的な症状が現れます。
・全身の倦怠感やだるさ
・仕事前の吐き気やめまい
・不眠や過眠などの睡眠障害
・下痢や便秘などの排便障害
・体重の減少
うつ病になると、気分が落ち込むなどの精神的な問題が生じますが、それだけではなく、人によっては「感情の変化に鈍感になる」という症状が現れます。
この状態では、気持ちが落ち込むことで視野が狭まり、「この程度できないのは甘えではないか?」という考え方に陥りがちです。
そうなると、抑うつといった自分の感情に鈍感になり、胃の痛みや吐き気、不眠などの身体の変化のほうを強く感じるようになってしまい、いつまでも自分の気持ちの異常に気づかないまま、身体の不調ばかりを気にしてしまうようになります。
うつ病の「早期発見」のために
うつ病は、気分の問題だけでなく、身体的な症状も引き起こすことがありますが、この事実はしばしば見過ごされがちです。
「うつ病は心の病」という先入観が、この問題をさらに悪化させることがあります。
内科や耳鼻科、脳神経外科など、さまざまな診療科を渡り歩いても原因が見つからない場合、実際には「精神疾患」が原因であることがあります。
重要なのは、うつ病が単に心の問題ではなく、炎症反応の増悪や心血管系に負担をかけるなどの身体的な問題も引き起こす「心だけでなく、身体にも大きな負担を与える病気」なのだということを理解することです。
これを知ることは、うつ病の予防や早期発見につながります。
もし自分や周りの人が長引く苦痛や解決しない症状を抱えていたら、それが精神疾患から来ている可能性を考えてみましょう。
これは、うつ病に対する理解を深め、早期対策を取る一歩になります。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。