「みるみる自信がついてくる方法があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)

精神科医が教える「みるみる自信がついてくる方法」ベスト1Photo: Adobe Stock

明日ワクワクするための習慣

 あなたの自信をしぼませる心の針は、自動的に現れてきます。
 自分ではなかなか見えにくくて、気づきにくい。

 しかし、「行動」をすることで「感情」や「自動思考」がコントロールできます。
 そのために有効なのが「ジンクス」です。

 生きるための希望や期待といったものは、将来に対して起こるかもしれない「不確定な要素」の中にこそ存在します。

 しかし、どれだけ将来に対して希望を持とうと思っても、「どうせ無理」と一瞬でも悲観的に考えてしまうと、即座にしぼんでしまい、未来の選択肢を自分から消してしまいます。

 そんなとき、ある魔法を唱えるだけで未来への期待値を高められるとしたらどうでしょう。
 あなたも子どもの頃、クツを蹴り飛ばして、「あ~した天気にな~れ」という天気占いをやったことがあると思います。

 そんな遊びでも、天気という不確実性を自分でコントロールする感覚が得られることで、「もしかしたら明日は本当に晴れるかもしれない」と、ほんの少し明日に期待できるのです。

ジンクスを取り入れよう

 大人になるにつれて、「そんなことに意味がない」とやらなくなりますが、子どもの頃のワクワクする気持ちは、今でも確かに覚えているはずです。
 じつは、いわゆる成功者やお金持ちと言われる人たちも、こういったジンクスの魔法を理解しています。

 成功している経営者や著名人の間では、「トイレ掃除を社長がする会社は成功する」というジンクスがあったりします。
 たとえば、ビートたけしさんは若い頃には自宅以外でもロケ地や公園のトイレ掃除をしていたと言います。イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏は、海外まで出かけてトイレ掃除をしていたと言いますし、松下幸之助や本田宗一郎といった名経営者もトイレ掃除にこだわっていたそうです。

 彼らは、ジンクスの魔法を取り入れることで、考え方のクセをコントロールして、不安や恐怖を克服してきたのです。

「次の舞台で失敗したらどうしよう」
「経営が傾いたらどうしよう」

 という、将来に対して自動的に考えてしまうクセで、彼らもつねに不安を感じていたでしょう。
 どんな成功者も、ことをなす前には不安や恐怖心があったはずです。
 つまり、メンヘラになってしまっていたのです。

 そんな自分の感情をコントロールするため、「トイレ掃除をする人は成功する」というジンクスを理性でいったん信じてみて、それを徹底することで、感情的な自分をコントロールしてきたのです。
 大きな不安に襲われても、

「でも、今日もトイレ掃除をしたから大丈夫だろう」

 と瞬間的に思うことができたのでしょう。
 ジンクスのよいところは、たとえ失敗しても、自分ではなくジンクスのせいにすることができる点です。

 もし失敗しても、「今日はトイレ掃除をサボったからだ」「もっと心をこめてトイレ掃除をするべきだったな」という考え方ができ、セルフリカバリーしやすくなるのです。
 これがジンクスの魔法です。

 ジンクスを重ねることで、失敗をジンクスのせいにできるようになり、成功もジンクスとひも付けされていくようになります。

「早起きして出社することで社長に褒められた」
「定時までに仕事を終えられたから出会いが広がった」

 など、どんどん自分をコントロールできるようになっていきます。たとえそれが理性では錯覚とわかっていても、効果は絶大なのです。

「やらされる」のではなく「自らやる」

 では早速、ジンクスを取り入れていきましょう。
 先ほどの例ではトイレ掃除でしたが、結論から言えば「何でもいい」のです。それを決めた本人がジンクスだと信じられるものであれば、内容は何でもいい。

 他人から押し付けられたものではないことが何より大事です
 とはいえ、よりよいジンクスを作るためのポイントがあるので、それを3つお伝えしておきましょう。

①「成功へ向かっていること」
 「なりたい自分のイメージ」と関連させることにしましょう。

②「いつでもできること」
 ハードルの高いものではなく、スモールステップであることを優先させましょう。

③「自分の過去とつながっていること」
 自分の過去の体験に関わることと結びつければ、さらに自分ごとになります。

 たとえば、次のようなジンクスはいい例です。

「朝、コーヒーを飲んでから仕事をスタートさせる」
「緊張するプレゼンの日は、懐に大金を入れておく」
「SNSを見て心がザワザワしたら、過去に上司から褒められたメールを見返す」
……

 人は、他人からの「やらされ感」を感じるほど、モチベーションが下がる生き物です。
 職場で上司から命令されてやる作業と、自分で企画した仕事の作業では、同じ作業内容でも、本気度もモチベーションもまったく異なるでしょう。

 ジンクスについても同じことが言えます。
「自分で考えて、自分のためにやる感」が出てくるようなジンクスこそ、あなた自身を変えるジンクスになるのです。

 それがあなたの自信となり、「理性的なあなた」が「感情的なあなた」をコントロールすることにつながります。

(本稿は、頭んなか「メンヘラなとき」があります。より一部を抜粋・編集したものです)

精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。