「効率よく考えられる人かどうかを見分ける、ある問いがある」
それが「論理的思考問題」です。知識や計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる問題を指します。Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験でも出題され、「スティーブ・ジョブズ超えの天才」と言われたあのピーター・ティールも自社の採用試験に取り入れました。これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える、「最高の知的トレーニング」でもあります。
そんな論理的思考問題のなかでも選りすぐりの傑作を世界中から収集し、解説した書籍が頭のいい人だけが解ける論理的思考問題です。「論理的思考」「批判思考」「水平思考」「俯瞰思考」「多面的思考」が身につく67の問題を紹介。「頭のいい人の思考回路」がわかり、読むだけで、一生モノの武器となる「地頭力」が鍛えられます。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「仕事の効率が悪い人」には解けないある問題を紹介します。(構成/石井一穂)

【論理問題】「仕事の効率が悪い人」には絶対に解けない問題『3つのフルーツボックス』とは?Photo: Adobe Stock

冷静に状況を俯瞰できるか?

 一部分だけ見ていてもわからなかったことが、全体像が見えたとたん解けてくる。
 その感覚がつかめる、簡単な問題があります。

「3つのフルーツボックス」

 3つの箱がある。箱はそれぞれ、以下のとおり。
「リンゴが入れられた箱」「ミカンが入れられた箱」「どちらかがランダムに入れられた箱」
 当初、箱には『リンゴ』『ミカン』『ランダム』と、正しいラベルが貼られていた。
 しかし何らかの力によって、すべてのラベルが間違った箱に貼り直された。
 3つの箱の中身を特定するには、

 最少でいくつの箱を開ければいいだろうか?

【論理問題】「仕事の効率が悪い人」には絶対に解けない問題『3つのフルーツボックス』とは?

 イラスト:ハザマチヒロ

 もちろん、すべての箱を開けてしまえば中身はわかります。
 当然、2つでも箱を開ければ、残り1つも消去法でわかります。
 そんなわけで、ふつうに考えたら答えは「2つ」になるはず。
 でも、そんな簡単なことがわざわざ問題になるのかということを考えると……?

パターンの少なさに気づけるか

 この問題には、驚くほど少ない回数ですべての箱の中身を見破れる仕掛けが存在しています。
 鍵になるのは、この一文。

 “しかし何らかの力によって、すべてのラベルが間違った箱に貼り直された。”

 3つのラベル『リンゴ』『ミカン』『ランダム』は、すべて間違った箱に貼られた。
 すなわち、

 『リンゴ』のラベルがついた箱の中身は、ミカンかランダム。
 『ミカン』のラベルがついた箱の中身は、ランダムかリンゴ。
 『ランダム』のラベルがついた箱の中身は、リンゴかミカン。

 ということが確定します。
 つまり、ありえる組み合わせの可能性は以下の2パターンのみ。

 <中身のパターン1>
 ・ラベルが『リンゴ』の箱の中身=ミカン
 ・ラベルが『ミカン』の箱の中身=ランダム
 ・ラベルが『ランダム』の箱の中身=リンゴ
 <中身のパターン2>
 ・ラベルが『リンゴ』の箱の中身=ランダム
 ・ラベルが『ミカン』の箱の中身=リンゴ
 ・ラベルが『ランダム』の箱の中身=ミカン

なぜ2パターンに限定できるのか

 なぜこの組み合わせに限定できるのか。
 順を追って考えてみましょう。

 たとえばラベルが『リンゴ』の箱の中身がミカンだった場合。
 このとき、ラベルが『ミカン』の箱の中身として考えられるのはランダムかリンゴですが、もしリンゴだとすると、何が起こるでしょう?
 唯一残っている、ラベルが『ランダム』の箱の中身が、ランダムだということになります。
 これは問題文にある「すべてのラベルが間違った箱に貼られた」という状況と矛盾してしまいます。

「3つすべてのラベルが間違った箱に貼られていないといけない」という強力な制限から、成立するパターンはかなり少なくなってしまうのです。

開けてはいけない箱

 組み合わせが2パターンしかないのなら、どれか1つの箱の中身が確定できれば、おのずと他の箱の中身も確定します。
 ですが、どれでもいいから適当に確認すればいいわけではありません。

「ランダム」という存在には注意が必要です。

 仮に、ラベルが『リンゴ』となっている箱を開けて、そこにミカンがあったとします。
 ですがそれだけでは、それがミカンの箱だったのか、ランダムの箱だったのかは、わかりません。
 ランダムの箱にたまたまミカンが入っていた可能性があるからです。
 つまり、中身がランダムである箱は絶対に開けてはならないのです。

 ということは、開けるべき箱は?
 唯一、中身がランダムである可能性がない、『ランダム』のラベルが貼られた箱です。

 ラベルが『ランダム』の箱を確認して、中身がリンゴだったら、それぞれの箱の中身は「パターン1」に。
 『ランダム』の中身がミカンだったら、それぞれの箱の中身は「パターン2」だとわかります。

 <問題の正解>
 箱は1つ開ければいい

「思考」のまとめ

 やるべきことが多すぎて嫌になる……後回しにしよう。
 そう思っていたのが、じつはひとつの作業さえすれば、他の作業も同時に解決したなんてことはよくあります。
 仕事ができる人は、手を動かす前にちゃんと考えられる人です。
 まずは状況を俯瞰してみるクセがつくと、無駄な選択肢や作業をカットできるようになります。
 忙しい方にはおすすめの思考です。

 ひとつの情報を得られることで、他の部分も見えてくることがある
 ・まずは状況を俯瞰して、キーになるポイントを見つけるのが大事

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。