思い出してください。授業で先生の話を理解しようとしても複雑でお手上げだったのに、黒板に図にしてくれた途端、すぐに飲み込め理解できた。そんな体験を誰しもが持っているのではないでしょうか。
「聞く」だけではワーキングメモリーがパンクしてしまうものの、「見る」も併用してインプットの負荷を分散させる。そうすることで、ワーキングメモリーをより効率的に使うことができます。だから、「『読む』『聞く』『見る』のどれが最も効果的か」という問いも大事ですが、「どうやってそれらを混ぜた形でインプットができるか」という視点を持つことが大切なのです。
しかしここで、要注意。マルチメディアのインプットなら、どんな形でも効果的であるというわけではありません。
それどころか逆効果になってしまうこともあるので、「読む」「聞く」「見る」を上手に混ぜ合わせることが重要になります。何でもかんでもゴチャ混ぜでは、思ったような効果は出ないのです。
例えば、字幕。動画を見る時に、「聞く」「見る」だけでは心許ないので、字幕をオンにして動画の内容の取りこぼしを防ごうなどと思ったことはないでしょうか? 字幕を付ければ、「聞く」インプットに「読む」インプットも追加でき、聞き逃しても文字で追い直せるので理解度も上がるだろう……。そう考えるのも自然です。
しかしながら、実際にはそうではありません。動画視聴で音声に字幕を加えると、ワーキングメモリーの負荷を分散させられるどころか、字幕の情報量でオーバーフロー状態になりかねないのです。
過度な書き文字によって、聞き手の注意力が文字の方に引かれてしまい、プレゼンの詳細が耳から入りにくくなるからです。うまく集中できなくなるわけです。
動画の字幕も同様に解釈できます。例えば字幕付きの映画で、字幕に気を取られて登場人物の表情を見逃したり、その場の雰囲気や気持ちが理解できなかったと感じたことはないでしょうか?
字幕によって、動画のインプットが増え過ぎてしまい、情報の理解度そのものが落ちてしまう傾向があるのです。
特に、未知の分野を学んだり、新しい情報をゲットしたりする時には、ワーキングメモリーに負荷をかけてはいけません。