山口 巨大な金塊は何の役にも立たないけど、砕いて小口化すれば流動性が生じて価値が出てくるのは当たり前のことで、その点においてフリードマンの考えは正しい。だけど、あくまで交換価値が高まるだけにすぎず、もともとの金塊全体の本質的な価値は変わりません。

小幡 本来、シカゴ学派は短期的にもお金の操作を否定しているから、フリードマンは派閥の中では堕落した存在だったとも言えるかもしれないけど。

アイドルと同じで手が届かないからこそ思いが募る<br />お金がもたらす“無限の可能性”という錯覚

山口 僕が危惧しているのは、信用と価値の希薄化を続けると瞬間的にバブルが発生することです。メディアや一般の投資家がそれをもてはやして追いかけ、いっそう過熱感が高まり、やがては弾け散る。そういったパターンが過去に何度となく繰り返されてきたにもかかわらず、社会全体が手放しでアベノミクスを賞賛しているのが奇妙です。

小幡 金塊を小分けする話で思い出したんだけど、2006年頃の不動産バブル期だと、都心の一等地は切り売りするよりも、まとめて売ったほうが高く売れた。300坪の一等地が24億とかね。「1000万円が60人に!」よりも「6億円が1人に!」の宝くじのほうが人はそそられるし、足したり割ったりして価値観が変わるって、お金が絡むものは面白いね。もっとも、それも単なる錯覚にすぎないのかもしれないが……。

山口 本当に、お金をテーマにすると話が尽きませんね。今日はどうもありがとうございました。

次回は4月5日更新予定です。


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アイドルと同じで手が届かないからこそ思いが募る<br />お金がもたらす“無限の可能性”という錯覚

本書が、リフレ政策による目先の円安、株高に浮かれる人々に対する警鐘となり、そして、安倍首相が、名目金利上昇のリスクに気づき、リフレ政策を修正することを望む。
そして、本書の予言が実現せず、小幡の言うことは当たらなかったと、私が批判を受けるというシナリオ。そちらのほうのシナリオが実現すること。
それを強く願って、本書を、安倍首相とかれの愛する日本に捧げたい。(著者からのメッセージ)

『リフレはヤバい』
(ディスカバー・トゥエンティワン 発行 1000円税別)発売中

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人は、経験を通して世界を創造する。
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