原さんはすぐに種明かしをしてくれましたが、この質問は入社面接のときによくするものだそうです。目的は、相手がだいたいの数の大きさをつかんでいるかどうかや、正確な答えを持っていない場合に、その場で必要な数字を自分でつくることができるかを見ることです。そして、「だいたいの数の大きさをつかんでいなかったり、必要な数字を自分でつくれないような人は、会社の経営はできないし、技術者にもなれない」という話をしてくださいました。ちなみに、当てずっぽうのように思える私の答えは、しっかりとした根拠に基づいて実際に近いものを導き出しているので、「合格」ということでした。

 そこから小さい頃の病気の後遺症が原因で、学校から追い出されそうになったり、就職がうまくいかなかったりしたこと、火薬を扱っている会社の経営者だったのに戦時中は軍用ではなく産業用に徹していたので戦後の公職追放を逃れたことなど、いろいろなことを話してくださいました。また経営者の心得のようなことも、いくつか教えていただきました。

大事な決断するまでに
必要な時間は“一晩だけ”

 とくに印象に残っているのは決断するときのコツの話です。「一晩考えたら自分で結論を出して行動しろ」と教わりました。大事なことは日頃からそれなりに考えているもので、考えていないことは二晩三晩考えたくらいで答えを得ることはできません。だからいまあるもので判断するしかないし、その検討には一晩あれば十分ということでした。また、人に相談するのはいいけど、「最後は自分で決断するのが大事だ」とも教わりました。人に判断を委ねると楽に結論を出すことができるものの、結果がまずかったときについその人のせいにしたくなります。そもそも状況が一番わかっているのは自分なのだから、最後の決断は自分の責任でやるべきということでした。