稲盛和夫の言葉に学ぶ「部下を持たせてはいけない人」と「持たせていい人」の違い写真はイメージです Photo:PIXTA

「優れたプレーヤー=良いリーダー」
とは限らない

 上司にとって、部下を昇進させるか否かの判断は、チームのパフォーマンスとともに自身の評価にも影響する難しい決断です。

 部下の中で業績を最も上げている人物が、最もリーダーに向いているとは限りません。

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 例えば、営業成績が抜群にいいという理由だけで昇進させて部下を持たせると、自分より能力が劣る部下をふがいなく思うのか、期待に応えてチーム全体の業績をもっと上げようと考えてしまうのか、部下に対する指導が行き過ぎて、パワハラに発展してしまうケースも珍しくありません。

 そのような危惧のある人物を昇進させるのであれば、部下を持たない地位を与えることも一つの方法です。

 ピーター・F・ドラッカーは、『マネジメント』(ダイヤモンド社)の中で、「機能と地位は切り離さなければならない」と書いています。

 そして機能と地位を切り離して成功している例として軍隊を挙げています。

 軍隊の少佐は地位(階級)ですが、階級を聞いただけでは、マネジャー(隊の指揮官)なのか、主に一人で活動する専門家(国防総省の研究者など)なのかは分かりません。

 同じように、部下を育て率いることができる人物なら課長や部長に昇進させて部下を持たせればいいし、業績は抜群にいいけれど自己中心的で協調性のない人――プレーヤーとしては優れているけれどマネジャーとしての能力が低い人物には、業績を評価して地位的には課長や部長に昇進させて報酬面では報いるけれど、部下を持たせなければいいのです。機能と地位を切り離すというドラッカー先生の言葉は、まったくその通りだと思います。