食料輸入量がマイナスの影響を受ければ、日本の食料自給率は、名目上は上昇するだろう。しかしそれはいいことではない。それは食料を欠く日常に近づくことと引き換えることであって、国内に流通する食料が減ることを意味する。結局は、この日本にとって最も安心できることは国内生産を増やすことなのである。
日本政府は有事を
想定していない?
もし日本に直接関係する有事が起きたそのとき、日本人の食料、特に主食のコメは大丈夫なのだろうか? 国内自給率が最大のコメが大丈夫でないとすると、事態は深刻と言わざるをえない。
農水省によると、日本で獲れるコメは年間約730万トン、輸入が70万トン程度、コメの需要は680万トン(大部分が国内消費)、輸出は無視できる程度に過ぎない状況である(2022年)。そして生産量も消費量も、長期的に見ると減少する傾向が続いている。
コメの政府備蓄量は100万トン程度と決められ、民間在庫(販売待ちの在庫)を合わせた月別の保管量(政府備蓄+民間在庫)は月によって変動し、農水省によると、最多は全国の新米が出そろう11月で450万トン程度、最少は収穫期が始まる前の8月で200万トン程度と、250万トンもの差がある。
政府はこれで十分だと太鼓判を押しているようだが、この量では有事や大災害を想定したものからほど遠い「10年に一度の不作(作況指数92)や、通常程度の不作(作況指数94)が2年連続した事態」が前提でしかない。世の中が平和である時はこれでもいいのだろうが、冒頭で述べたような有事の際にはまったく意味を持たないのではないか?
日本に直接関係する有事にでもなると、海外にほぼ100%依存する農業機械向けの石油燃料と化学肥料や化学農薬の原料は大きな制約を受けずにはいられない。平均年齢68歳の稲作「高齢者農業」を支えてきたのは、農業機械化と化学肥料・農薬である。
そのほか、ほぼすべてを海外に依存する超低自給率の小麦・大豆・トウモロコシ、肉類に食用油原料、野菜類や加工食品、魚介類の輸入も、平和のときとまったく同じようなわけにはいかないだろう。