2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』がついに刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感Photo: Adobe Stock

やる気スイッチが消えた

「Tさんは、やる気があって主体的に動いてくれます。優秀な人です」

 そう言って、あるプロジェクトにTさんを推薦したことがある。

 別のプロジェクトで一緒に仕事をしていたとき、Tさんの働きぶりに感激した。スキルも高く、細やかな気配りができるうえ、自らどんどん動いてくれたからだ。

 ところが、推薦後のプロジェクトでTさんは目立った活躍をしなかった。

 指示通りにはこなすが、積極性はかげをひそめた。報酬は良かったはずなので、原因はそこではないと思う。

 私が「プロジェクト、どう?」と聞くと、「大丈夫です」

 まぁ、とくに問題はなさそうなのだが、思っていたのと違う。

Tさんのやる気スイッチ、どこにいっちゃったんだろう?」

 やる気あふれるTさんを知っている私は、当初、不思議に思った。

やる気が出ないのは環境のせいかもしれない

 しかしよく考えてみれば、人間の特性として「やる気のある・なし」があるわけではない。自分だってやる気のあるときと、全然ないときがある。

 組織開発コンサルタントの勅使川原真衣氏による書籍『組織の違和感』(ダイヤモンド社)には、こんな記述があった。

やる気が出ないというのは、本人の大事にしていることや得たいものが環境と合っていないからという場合が多分にあります。

――『組織の違和感』p.193-195より

 私が推薦したそのプロジェクトの環境が、Tさんの大事にしているものと合わなかったということだろう。

それがわからなかったのだから、私の観察力がポンコツだったのだ。

 これが一つの職場で起きたことであれば、「ずっと成果を上げていたTさんは、最近やる気がないようだ。不調なら、少し休んだほうがいいかもしれない」などという話になりかねない。

 やる気が出なくなったのは本人の問題ではなく、環境に問題があるかもしれないのに。

やる気の出る言葉は人によって違う

 本書では、「やる気」の出る言葉が人によって異なるとして、具体例を挙げて解説している。
 ここでは一つだけ紹介しよう。

締め切りやレースで、ラストワンマイル(ゴールまであと一歩)!
あなたなら、どの声かけがいちばんうれしいですか?

A 「ここを乗り切るのは○○さんしかいない!」
B 「みんなあなたのことを応援してるよ!」
C 「すごいよ○○さん!」
D そもそも声かけ不要。集中したい。

――『組織の違和感』p.193-195より

 自分がやる気の出る言葉は、みんな同じようにやる気が出るわけではなく、人それぞれなのだということにあらためて気づく。

 ちなみに私はこのケースでは「声かけ不要」のDを選ぶが、TさんはBを選ぶだろうなと思う。

 それぞれの人の能力を最大限に活かすためには、こうした声かけを含め、やる気の出る環境を整えることが重要だ。

「やる気がない」と思ったとき、それは本当に本人の問題なのだろうか。環境を見直してみる価値はありそうだ。

(本稿は、『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念したオリジナル記事です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。