テレビのニュース番組などで「銀行の金利が…」「年金の支給開始年齢の引き上げが…」などといった言葉を耳にしても、なんとなく聞き流している人も多いでしょう。しかし、経済の情報は実は私たちの生活にとても関係が深いものです。『僕らの未来が変わる お金と生き方の教室』(監修:池上彰、出版:Gakken)では、お金のことと自分の生き方について、わかりやすく解説しています。今回は「日本の借金」について解説します。
増え続ける日本の借金
有効に使われているか?
日本は豊かで暮らしやすい国ですが、財務省によると、政府の借金は2020年12月の時点で過去最大の1212兆4680億円(累計)に増大しています。
これは国内で1年間に生産・消費された全体の価値であるGDP(国内総生産)の2倍以上にあたります。先進国でこのような状態になっている国は他にありません。
政府が国債を発行すると、「世の中のお金が増える」のですが、それはつまり政府の借金は、世の中に流れているということになります。実際のところ2022年3月末の時点で、個人の金融資産は過去最高の2005兆円に達したと日銀が発表しています。
また企業の利益の蓄積である内部留保は2020年度末で484兆円以上であると財務省も発表しています。政府の借金は個人や企業へ回り、お金はあるところには十分にあるということです。
しかし、格差が拡大していますし、消費が上向かずにGDPは低成長を続けています。 日本の問題は、政府が借金をして世の中のお金の総量を増やしているのに、お金が必要なところにめぐらないこと、そして誰もが将来への不安を抱えてお金を貯め込んでしまうことにあるのでしょう。
日本は毎年、税収だけでは国の運営をできずに国債を何十兆円も発行して借金を重ねています。借金の返済をするためにまた借金をしているような状態です。少子高齢化に伴い、社会保障費もこれからもっと必要になるなか、国債に頼るだけでなく税収を増やしていく必要があるでしょう。経済の状態をよくし、お金がしっかりめぐるような状況をつくる。
どのように税金を徴収していくかを定め、税収を増やしていく。こういったことを段階的に実施できるように、政府はどんな方策を打つのか考えなければいけません。