モテなくなったイケメン後輩
ブランド力の落ちた企業

 先日、20年の結婚生活にピリオドを打った学生時代の後輩に会いました。若い頃から仕事に対して非常にアグレッシブな彼は、今ではいくつもの会社を経営する優れた経営者になっています。結婚前の彼は、スポーツで鍛えた細マッチョなスタイル、サラサラの髪と甘いマスクで「狙った相手は必ず口説き落とせる」と豪語するほど、本当に女性にモテていました。

 離婚後も仕事は順調のようなのですが、20年間の結婚生活の間に彼の髪は薄くなり、明らかに体重が増えた姿に、かつてのモテモテだった頃の面影はありません。とはいえ、地位も名誉もお金もある彼は、さぞかしシングルライフを満喫しているかと思いきや……、最近はさっぱり女性にモテないというのです。

 折しもそんな話を聞いた矢先、私は、ある老舗企業のマーケティング担当役員とお会いする機会を得ました。この会社は、かつて業界1位のポジションに上ったこともあり、技術に深い造詣をもって製品へのこだわりを貫く、典型的なプロダクトアウトの文化を持っている会社です。

 ところが、ここ最近は業績が芳しくなく、業界でのシェアも1、2位の企業に大きく水を空けられかろうじて3位に留まるも、間もなく4位に転落かという厳しいポジションに追いやられています。それを実証するように、企業ブランドイメージ調査でも同社の認知度は低く、すでに過去のブランドであると思われている、という厳しい結果が出ました。このままでは市場から退出を強いられてしまう可能性もあり、再起を図るべくマーケティング戦略全般のコンサティングをしてほしい、という依頼を受けたのです。

 若い頃モテモテだった大学の後輩と、かつてのトップブランド企業……。私は、この両者が「今、モテない理由」に、「若さ」や「流行」といった、時間の経過とともに変化していく要因以外の何らかの共通点があることを、おぼろげに感じ取っていました。

 その共通点とは? コンサルティングに先立ち、担当役員氏にヒアリングをする中で、それが何なのかが、私の中で次第に明確になって行ったのです。