潜在欲求を正確に
つかむ方法はあるか

 モノが豊かになる前の時代、市場は企業主導で創られてきましたが、インターネットの普及で情報の流れが一変し、消費者はもはや企業から製品や情報の提供を待つだけの受け身の存在ではなくなりました。

 もはや、企業が自社の思い込みによる“プロダクトアウト”的な画一的商品を提供しても、消費者を振り向かせることは難しくなってきています。消費者の声を真摯に聞き、消費者が本当に必要とする商品やサービスを考えない限り新しい需要は生まれない時代です。これまでのアプローチに捉われない、「消費者起点の需要創造」でイノベーションを起こす力が、企業に求められているのです。

 消費者が成熟するにつれ、それまでの表面的な分析だけでは説明の出来ない消費者行動が増え、消費生活はより複雑になりました。消費意欲が減退し、製品クオリティーや価格だけでは購買意欲を刺激することが難しくなるなかで消費を喚起していくためには、消費者の心を動かしている潜在的な欲求を理解することが、ますます重要になってきています。

 その潜在的な欲求を、私たちマーケターは「消費者インサイト」と呼びますが、近年、マーケティングや経営の領域において、消費者との関係構築のための共感点として注目されています。

 しかし、消費者インサイトを正確に把握することは、簡単ではありません。

 アンケートやインタビューといった従来型のマーケティングリサーチ手法だけでは、リサーチャーが意図する範疇を超えた回答を得ることは難しく、購買行動に至るリアルな消費者心理を分析するデータとして十分とはいえないからです。

 最近では、定性的に消費者ニーズを調査する、エスノグラフィー等の行動観察のアプローチも注目されていますが、世界で用いられているさまざまなメソッドを探索し、体験してみても、いまだ、これという消費者インサイト把握に有効な手法に、私も巡り会えていません。

 そこで、今話題の「ビックデータ」がクローズアップされるようになったのです。