インタビュー中、二人の監視員ともあたりを見回し、自殺志願者がいないかどうかと目を光らせていたのが印象的であった。次に私は、声をかけたときの反応について尋ねてみた。
A 「自殺しに来たんじゃない!」と言って逆に怒る人もいるけど、警察が到着するまでは、なだめながら待ってもらっている。私たちは、見つけ出して「お帰りください」だけだから。複数回来る人もいるが、毎回、知らないふりをされることもある。また、複数回来ている人で、声をかけて欲しいという素振りをする人もいる。そのような人は、声をかけてもらうために来ているかもしれない。
自殺は、周りを巻き込んでどんどん不幸になる。仮に息子だったら、その家庭は、離婚とか散り散りバラバラとなる。もし、ここに修学旅行に来た子どもたちが見つけたら、一生『心の傷』として残ってしまう。
山奥で自殺すると思っているでしょうが、実際は、樹海を歩いて数分のところで自殺する。誰にも知られずに死なせてくれって思いつつも、どこかで「見つけて欲しい」と思うんでしょうね。
もちろん、誰にも見つからないようにと山奥で自殺する人もいますが、年に一回以上は青木ヶ原樹海でどこかの部隊(自衛隊?)が訓練を行っているようなので、そのときに発見される。だから、見つからないということはないと思う。北海道から九州まで全国からやって来るよ。遠くからわざわざ来なくても……。
Aさんの表情を見ていると、迷惑がっているというよりも、心底家族や周りの人々を心配しているように思えてくる。パトロール隊に声をかけられた人たちの心情を知りたいと思ったが、それはかなわない。推測でしかないが、このような人たちに対峙すれば、「思い留まる」ような気がしてならなかった。
最後に、インターネットでもよく見かける、自殺予防のための看板効果について尋ねてみた。
A 逆効果じゃないかな。むしろ、ここが入り口だって教えているようなもんだから。最近は、インターネットやSNS、ユーチューバーの影響が大きいと思う。