私は、「どのような方に声をかけるのですか?」と、監視員のAさんに尋ねた。

A この仕事に入ったばっかりで分からないときは、それはもう手当たり次第だったかな。今は声かける人を絞っているから。1人のときもあるし、複数のときもあるし。以前、バスから降りてきた人に2人で行こうとしたら、こっちにもバスが着いて、彼もちょっと「あれかな」ということになり、2人で声かけをしたかな。同時に3人いたこともあるし、一日に4人いたこともある。

 だいたい、予想はしてるけどね。たとえば、一昨日みたいに満月や新月の近くとか。しっかり見ているというか、よく見るっていう感じかね。先輩たちからきつく教え込まれたよ。「何のためにやっているんだ!」って強く言われ、「給料もらうだけの、ぼーっとしているぐらいなら辞めろ」って言われてきた。決して、やさしい言い方じゃなかったよ。

 先輩には、「『トイレですか?』って、声をかけたらいいんだよ。『ふれあい声かけ事業』なんだから、どんどん話しなさい」って言われて。最後の砦っていうか……ゲートキーパーって言うんだっけ。

誰にも知られず自殺しても
遺体はすぐに見つかってしまう

 もう一人の監視員であるBさんが、補足するように口を挟んだ。

B タクシーやバスから降りてきて、迷うような動きをするんですよね。コロナ前は、マスクをしている人が多かったですね。帽子を深く被って。コロナ禍になってみんながマスクをするようになったから、分かりにくくなったよ。でも、お腹にロープを巻いたり、刃物をもっている人が増えましたね。コロナ禍になってからは、若い世代や高齢の方が増えたという印象です。それ以外には、バスの後をついていったり。

A バス停で特有の動きをするんで。自殺しようっていう人は心が沈んでいるわけだから、行こうか戻ろうかと、迷うような特有の動きをする。そんな動きとかを見て、観光客じゃないよねという人に声をかけて話している。そのとき、顔の表情や目の動き、筋肉の動きを見ている。