勘右衛門(小日向文世)に「働かんかい!」 借金取りの息子・銭太郎の“正論”にスカッとした〈ばけばけ第26回〉『ばけばけ』第26回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年半続けてきた著者による「読んだらもっとドラマが見たくなる」連載です。本日は、第26回(2025年11月3日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)

「ぐるぐるまわって何が悪い」

「ドコ、モ、ジゴク。」(演出:泉並敬眞)という物騒なサブタイトルの週。
 ヘブン(トミー・バストウ)が紆余曲折を経て初登校する。

 豪勢な朝食をたいらげて出かけて行くヘブン。あんなにグズグズしていたのに夕食にはおいしい日本酒を用意してほしいと平太(生瀬勝久)に頼んだりして、わりと厚かましい。そのうえ、学校に遅れると急かす錦織(吉沢亮)に「ケチ」と言う始末。
 第25回の終わりで錦織が「ああいう人(イラチでわがまま)なんじゃないか……」と言っていたが、本当にそうなのかもしれない。

 モデルの小泉八雲への先入観が完全に覆された。勝手に知的で上品な人と思っていた。いや、あくまでモデルなので、ヘブンと小泉八雲を同一視してもいけない。日本に来たおもしろ外国人のドラマと思って見ていきたい。

 さて、この場面で注目したいのは、トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)である。ドラマの主人公は彼女であり、ここでも彼女は出演しているが、セリフはひとつもない。ただ、ヘブンと錦織のやりとりをニコニコ見ているだけなのだ。主人公だからセリフを書いておこうという忖度(そんたく)がないのが清々しくあったし、でも彼女の笑顔のアップでこの場面が締められて、その笑顔が最高なのだった。

 赴任先の中学に向かったヘブン、教師の資格を持っているわけではないので、また不安になっていく。
 教室にさっさと入らず、前の廊下でぐるぐる回りはじめる。不審に思う生徒たちに、錦織が「ぐるぐるまわって何が悪い。あれ(独特の間)はヘブン先生のスタイルだ」とフォローする。

 あれは……の後の間がいい。とっさに無理くり理由を考えた感がよく出ていた。

 それにしたって教師でもないヘブンに、本当に教師が務まるのだろうか。