想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第2回。対談相手はNEXYZ.Group代表取締役社長の近藤太香巳氏。Yahoo! BBの販売代理店として、その並外れた営業力と企画力で契約件数を増やし、同事業を成功させた立役者の一人だ。高校を2度も中退した経歴を持つ近藤氏だが、あの孫正義に「ふざけんといてください」と“ブチギレ”たことがあるという。なぜそこまで怒ったのか?孫氏はどんな反応を示したのか?惜しげもなく語ってくれた。(構成/ライター 田之上 信)
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「だからハゲたんですね」
近藤氏のツッコミに孫氏の反応は?
近藤 孫さんはお茶目なところがありますよね。当時、ソフトバンクの本社にゲストルームがあって、よく一緒にご飯食べたんです。あるときは模造品の刀を腰に差して着物姿でやってきたこともありましたね。あと、ハゲネタも怒らない。あるとき「近藤くん、僕はプロ野球チームを買ったけど、実はサッカーのほうが好きなところがあってね、特にヘディングが得意なんだよ」と言うんです。僕は大阪人だから、これはツッコまなあかんと思って、「だからハゲたんですね」って言ったら、周りがみんなシーンとなった(笑) 。孫さん笑ってましたけど。
井上 今の話で、「サッカーのほうが好き」とあえて誇張するのも孫さんらしいですね。正確には「サッカーも好き」ですよね。僕がいつも言っているのは、孫さんというのは「アナログの心を持ったデジタル人間」だと。孫さんは両方持っているんです。要するに左脳も右脳もよく働く。数字に強いのと同時に、お茶目な部分がある。そこが孫さんの魅力だと思います。近藤社長も話がおもしろいですし、孫社長と共通点が多いように感じます。一方で、孫さんとはここが違うと思う点はありますか。
近藤 孫さんはドライです。すごい「heart to heart」で人に心をよせてくるのに、経営者としては実にスーパードライです。
井上 なるほど、それもわかりますね。
近藤 最初はみんな孫さんのあのスケールと、あの志と、あのトークにやられるんです。それでほれ込むわけです。さらにこれで俺の人生が変わると勘違いしちゃうんです。
井上 なるほどね。
近藤 孫さんに見初められたと勘違いするんですね。でも結果が出なかったら、バッサバッサ切られていくんです。僕がよかったのは、販売力が1番だったから。でも2番手以降の人は大変ですよね。
井上 ビジネスに厳しいのでそう感じるのでしょうね。実は孫さんは人を切らない。
近藤 プロの世界だから結果がすべてなんで、それは僕もすごくわかります。わかるけど、自分はあんなドライに判断はできないだろうなと思うんですね。
「ふざけんといてください」
孫正義と袂をわかった経緯
近藤 僕はのちに孫さんと喧嘩をしたんですよ。すぐに仲直りしてますけど。
井上 その話を教えてください。