「良家のお嬢様は
もう演じない」

 しかし、その時、彼女は自分たちの知る寺島とは違う一面を目の当たりにしていた。

「結構お酒を飲んだ後だったんですけど、彼氏と同棲しているとか、そんな話になったんですよ。『よくそんな生活、親に反対されないね』って聞いたら、『周りの目を気にするのはもうとっくにやめてるから』ってキッパリ言ったんですよね。だから“地元用”の格好をしてこなかったのかな、と妙に納得しましたね。いい子、良家のお嬢様はもう演じないと。私からしたら、春奈が遠くに行っちゃったようで寂しかったですけど、そういう生き方も決して悪くないな、って思ったのを覚えています」

 良家のレッテル。それをかなぐり捨てるように、寺島は自分の道を突き進んでいく。

 それ以降、寺島は地元から消えた。そのかわり、目撃されたのは東京・六本木だった。六本木の交差点で寺島とばったり出くわした同級生がいた。その時寺島は「今、ここでキャバ嬢をやってるの」と胸を張ったという。

 残念ながら取材班は、寺島が在籍していたキャバクラ店にたどり着くことはできなかった。しかし、週刊誌には以下の記事があった。

「働いてたときは髪も明るくて、盛ってたからね。勤務態度はたまに当欠(当日欠勤)するくらいで真面目なほうだった。トークもうまくて人気はあったほう。彼氏なのかわからないけど、男にお金を貢いだりで借金があったと聞いてる。ある日、突然、連絡もなく辞めたんだけど、噂では別の店に行ったとか。まぁこの業界では珍しくもない話だけど、やはり昔からお金が最優先だったんだろう」(週刊ポスト 2023年5月5・日合併号)

 長野を出た寺島は、自由に、気の向くままに生きていたのだろう。そんな寺島はフィリピンでのリゾートバイトだとだまされ、ルフィたちのところに流れ着いたとされる。