借金に苦しむ人たちを、闇バイトなどの違法行為に誘い込むヤミ金が増えている。実際、世間を震撼させた「ルフィ事件」でも、周囲から「人懐っこい」「無断欠勤せず仕事に真面目」と評されていた男が逮捕されたが、彼もヤミ金の債務者だったことがわかっている。なぜ一般人が、ヤミ金の餌食になってしまうのか。(東京情報大学教授 堂下浩)
犯罪と借金苦には
深い関係がある
「ごく普通の人」が、ある日突然犯罪者になる――。そんなドラマのような展開は、実は決して珍しくない。特に本人が日頃借金に苦しんでいる場合、どうにもならなくなって犯罪に手を染めるというケースが後を断たないのだ。
最近は、多額の借金を抱えた返済困難者は“闇バイト”という手段を通して強盗を含めた凶悪犯罪に引き寄せられている。背景には、返済困難者と闇バイトのバイパス役を果たすヤミ金の存在がある。昨今の報道によると、ヤミ金の利用者が闇バイトに引き込まれるように流れていく事件が目立つのである。
2023年8月に発表されたヤフーの調査報道によると、「闇バイト」と検索した人は検索の7日〜15日前に「闇金」「個人間融資掲示板」「ブラック借り入れ方法」といったヤミ金の関連単語を検索する傾向が強い。ここで紹介するいくつかの事件は、返済に窮したヤミ金利用者が、SNSを通して闇バイトに加担した事例である。
2023年2月、長崎市で発生したニセ電話詐欺事件で、「受け子」「出し子」役として25歳(当時)の男が長崎県警に逮捕された。この容疑者は工学系の資格をいくつも保有しており、船舶の機械部品メーカーで働いていた。月給は手取り約24万円。20代半ばという年齢から考えると決して悪くない収入だが、スマートフォンのゲームアプリにはまり、課金を重ねていた。