「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、本書でも「狙うは孫正義氏、北尾吉孝氏から絶大な信頼を得た男」として登場したFIDIA役員の高橋良巳氏。野村證券の国際金融部門でソフトバンク・ファイナンス・コリア、SBIコリア社長、SBIホールディングスの取締役執行役員を歴任。現在、グループ会社でベンチャー企業への投資をメイン事業とする「グローバルフロントインベスメント」代表を務めている。そんな高橋氏は、『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回は、数多くの若手が活躍するFIDIAにどのような思いで仲間入りしたのか、その真意を伺ってみた。
ノリノリ企業は「どこで」つまずくのか?
――高橋さんは破綻直前の当時韓国最大の貯蓄銀行を買収し、再生に成功。300社超の韓国ベンチャー企業へ投資するなど多くの実績の持ち主です。順風満帆なキャリアから一転、ヘッドハンティングでFIDIAへ“仲間入り”したのは、どのような心境の変化があったのでしょうか?
高橋良巳(以下、高橋):FIDIAはとても若い会社で、ベテランが極端に少ない、いわゆるピラミッド型企業。コア人材のほとんどが30代です。
当時、あと数年で60代に入る年齢だった僕は、各メンバーのちょうど親世代なわけですが、入社の動機としては年齢的なことが大きかったです。
ピラミッド型企業のメリットは、年齢に関係なく責任ある仕事を任せてもらえること。だから、社員の成長スピードが速いのです。
また、みんなエネルギッシュなので、何をするにも突破力があります。
一方、デメリットは「おもし」になるような人間がいないため、牽制機能に欠ける点です。
その結果、ある一定規模は超えるものの、不祥事を起こして倒産したり、良い人材が育ちにくくなったりします。
これは、僕が投資の専門家としてあらゆる企業を見てきた感想です。
その点、FIDIAはとても面白い会社だから、そうなってはもったいない。
自分がおもしになることで、デメリットを回避できればと思ったんです。
人望の厚い人がしていること
――では、高橋さんが若手の頃は、上司や先輩とどんな関係でしたか。
高橋:昭和のまっただなかですからねぇ。当時の金融業界は、業界自体の体質的な問題もあり、夜中の2時、3時に平気で「今すぐ来い!」と電話が鳴るわ、灰皿が飛んでくるわ……今では絶対にありえないことが起こっていました(笑)。
――阿部サダヲ主演のテレビドラマ『不適切にもほどがある!』の世界ですね。
高橋:そんな感じです(笑)。
しかし、恨んでいるかといえば、全くそうではない。大きな仕事や刺激的な仕事をたくさん任せてもらえましたし、「自分としては限界まで頑張ったけど、どうしてもあと一つ足りない」……となったときに、黙って手を差し伸べてくれたりもしましたから。
部下の成長のために力を使える上司であり、最終的には守ってくれるという懐の深さがある。そんな人たちが上司だったので、僕はとても恵まれていました。
ですから、今の“仲間”に対して、僕もそうありたいと思っています。
人望の厚いビジネスパーソンは、仲間やまわりの人たちを大切にすることが大前提なのかもしれませんね。