人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。
しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。
本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、発売後、すぐに重版が決まっている。がん、糖尿病、高血圧、食事、生活習慣、人間ドック、メンタルというさまざまな観点から、病気にならない知識と習慣をあますところなく伝えています。

脳ドックは意味がない!? アメリカで「行わないほうがいい検査」になっている理由とは?Photo: Adobe Stock

そもそも脳ドックって何?

 脳ドックとは、MRIや「首への超音波検査」を使用して、「脳腫瘍」や「くも膜下出血」の原因となる脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)、また脳梗塞の原因となる首の血管の狭窄(きょうさく)などがないかどうかを調べる検査です。

 人間ドックの中にも組み込まれていますが、実は脳ドックを行っているのは世界的に見ても日本だけなのです。

 1980年代に日本の脳ドックの先駆けとなる「脳動脈瘤検診」が札幌で誕生します。以降各地で普及し、1992年に日本脳ドック学会が生まれ、その結果として人間ドックの項目としてスタンダードなものになっていきました。

 日本発の独自のルートで誕生した脳ドックなのですが、世界ではとり入れられる気配がまったくありません。

 それどころか、アメリカでは「症状のない人」に首の血管の超音波検査を行うのはデメリットのほうが大きいと判断され、グレードDの検査(行わないほうがいいだろうという検査)になっています(※1)

アメリカで行われていない理由

 なぜアメリカでは「行わないほうがいい」という判断になっているのでしょうか?

 まず、首への超音波検査(頸動脈エコー)の主な目的は「首の血管が狭くなっていないかどうかの確認」です。

 あまりに狭くなっているようだと脳梗塞のリスクが非常に高い状態といえます。狭くなっている首の血管の内側を切除する手術(頸動脈内膜剝離術)やバイパス手術を行うことがあります。

 ここで問題になるのが「偽陽性(ぎようせい)」の問題です。