テスラに逆風!EVはもうダメなのか?それでもテスラに期待する唯一無二の強みとはアカデミー映画博物館で開催された第10回ブレークスルー賞授賞式に出席したイーロン・マスク氏 Photo:Kevin Winter/gettyimages

米国の電気自動車(EV)テスラはもう「成長株」ではないのだろうか? 昨今のEV悲観論は理解しつつも、それでもテスラが成長しそうな理由を断言しよう。(未来調達研究所 坂口孝則)

テスラに逆風!EVはもうダメなのか?

 このところ米国の電気自動車(EV)大手テスラに逆風が吹いている。同社は4月2日、2024年第1四半期(1~3月)の新車販売台数を発表した。43万3371台を生産し、38万6810台(前年同期比8.5%減)を販売(納車)したという内容で、市場予想を大幅に下回った。

 同社は販売減の理由を表向き、生産側の問題とアナウンスしている(中東・紅海の海運混乱による部品不足や、ドイツ工場で火災が起き操業停止したこと)。しかし、世界全体でEV需要が減少していること、中国EVメーカーの攻勢で競争が激化していること、値引き施策の効果が減っていることなどが要因にあると、関係者の一部は認めている。

 また、開発を進めていた廉価版EV(2万5000ドル程度)から撤退するとの報道もあった。イーロン・マスクCEOは、これを明確に否定するわけでもなく、微妙な反論をしている。高級車である現行モデルでは販売数が伸び悩むので、廉価版の発売が打開策になると考えられていたが、方針を転換する可能性はある。すでに中国のBYDなどが1万ドル前後のEVを販売しているからだ。

 そして、テスラは全世界の従業員の10%以上を削減する計画も明らかになっている。その数、約1万4000人にも上るという。この数年で従業員が倍増していただけに、反動が生じた格好だ。

 同社の株価は急落し、米国時間4月19日、年初来の下落率が40%を超える厳しい局面となった。S&P500の他の銘柄と比べても、不調ぶりが際立つ状況だ。

 さらに、テスラではない他の企業も、EVをめぐってはネガティブな動きがある。例えば、米アップルは10年前から取り組んできた自動運転EVの開発を中止した、と伝えられた。このニュースは、「あのアップルですら、EVの領域では未来を見られなかった」といったある種のショックを世界にもたらした。はたまた、大手自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、独フォルクスワーゲンもEVが計画通りに進んでいないことを認めている。

 テスラはもう「成長株」ではないのだろうか? EV市場にはうまみがないのだろうか? 本稿では、昨今のEV悲観論は理解しつつも、それでもテスラが成長しそうな理由を断言しよう。