FRBは12月16日に政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を0~0.25%に引き下げた。今回の声明文には、意外に日本銀行の経験を検証した面が見受けられる。

 第1に、完全なゼロ金利政策を選択しなかった。FRBは誘導レンジの下限をゼロ%と言いつつ、所要準備、超過準備への付利を0.25%にした。恒常的にゼロ%近辺で推移しても構わないと考えるなら、FRBは付利を停止しただろう。

 FRBは量的緩和策下の日本ほどにはドルの短期金利をゼロ%に近づけたくないようである。現状からさらに短期のイールドカーブを徹底的にゼロ%に向けて押しつぶしても、総需要に対する刺激効果はさほどないと見なしているように感じられる。

 むしろ、短期金融市場の機能をより壊すことのデメリットが気になっているのだろう。FF市場で金融機関がお互いにクレジットラインを設定して、余裕資金を運用する機能を最低限は残しておかないと、将来の出口政策(かなり先だが)がより難しくなる恐れがあるからだと思われる。

 第2に、日銀も以前採用していたが、FRBは今回、長期金利を押し下げるために「時間軸」を採用した。「委員会は、脆弱な経済状況は、FF金利が当分のあいだは例外的に低い水準にあることを保証するだろうと予想している」。

 第3に、日本で採用された準備預金(当座預金)残高ターゲットをFRBは今のところ採用していない。FRB幹部は12月16日に、FRBの資産膨張は、マネタリスト的な発想に基づく量的緩和策ではないと説明し、量的緩和策と呼ばれることをいやがっていた。