4月、イスラエルと、パレスチナを実効支配しているイスラム組織ハマスの戦闘が続いている中東地域の緊張がさらに高まった。長年対立してきたイスラエルとイランが直接的な武力衝突に至ったのだ。中東はなぜ不安定な状況が続いてしまうのか。「ゲーム理論」を用いてその構造を読み解く。(やさしいビジネススクール学長 中川功一)
イラン・イスラエルが「抑制的な攻撃」をするワケ
さしあたって、戦争の危機は去った。
イスラエルとイランの間で起こった、双方が数百発のミサイルを撃ち合った武力衝突は、どうやら大規模な戦争に発展することなく収束に向かいそうである。
しかし、だからといって、中東情勢がこのまま和平に向かっていくとは決して考えられない。双方、ただ「相手を滅するにあたり機が熟していない」というだけの、かりそめの小康状態だからだ。
この情勢がいかに不安定であるのか。その原因は、どこにあるのか。
古くはキューバ危機の分析においても活用された「ゲーム理論」を用いて、現在の中東情勢を分析してみたい。
まずは、なるべく簡潔に、イスラエル・イラン情勢について説明してみよう。