《地図でわかる》ハマスを駆り立てた中東情勢の大変貌【池上彰・増田ユリヤ】サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子。2023年9月9日撮影 Photo:JIJI

ガザ地区を支配するハマスとイスラエルの軍事衝突。ジャーナリストの池上彰氏は「米国の仲介でイスラエルと、アラブの盟主ともいわれるサウジアラビアが国交正常化に向けて動きだしたことが契機」だったという。中東情勢を巡る各国の思惑とは。池上彰氏と増田ユリヤ氏が対談した。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)

ハマスは過激な行動に出過ぎる
「鬼っ子」のような存在

増田 イスラエルがガザ地区に戦車や歩兵部隊を投入し、ガザ地区を支配するハマスと激しい戦闘が行われています。(※編集部注:11月29日現在、休戦中)

池上 ハマス以外にも、レバノンを拠点とするイスラム教シーア派の武装組織であるヒズボラがイスラエルを攻撃し、武力衝突が続いています。さらに、同じくシーア派の武装組織でイエメンに拠点のあるフーシ派も、イスラエルに向けて弾道ミサイルと無人機を発射したと報じられています。

増田 ハマスの背後にはイランがいるといわれていますよね。

池上 はい。イランはハマスだけでなくヒズボラやフーシ派も支援しているといわれています。宗派で言えばハマスはスンニ派で、ヒズボラやフーシ派はシーア派。彼らを支援しているイランも国民の90%近くがシーア派であり、宗派を超えて連携しています。ヒズボラが本格的な攻撃に出るかどうかはイランがゴーサインを出すか否か次第、という状況です。

増田 イランは全面戦争に発展することを恐れ、積極的には参戦しないという見方もあるようですが。

池上 シーア派の各組織や他のアラブの国々にしても、ハマスは本来、過激な行動に出過ぎる「鬼っ子」のような存在で、扱いに手を焼いている面がありました。しかし対イスラエルとなれば話は別で、アラブの大義としては宗派を超えてでも助けないわけにはいかない。結果として、イランの革命防衛隊の別動隊である民兵組織までもが、イランの指示次第でイスラエル攻撃に参加する可能性があります。

 今は慎重姿勢ですが、仮にイランが参戦するようなことになれば、米国を巻き込んだ中東戦争の様相を呈するでしょう。米国はそうした事態を避けるため、イスラエルに「いくらヒズボラがいるからといって、レバノン侵攻は絶対にやめてくれ」と自制を求めています。

イスラエルとサウジアラビアの
国交正常化交渉にハマスが焦った

増田 こうした事態に至ったのは、米国の仲介でイスラエルと、アラブの盟主ともいわれるサウジアラビアが国交正常化に向けて動きだしたことが契機でしょうか。

池上 はい。ハマスとしては、このままアラブ側とイスラエルがそれなりにうまくやっていくようになれば、パレスチナの問題が埋没し、世間から忘れられてしまうという焦りがあったのでしょう。

増田 池上さんは9月下旬と10月中旬にクウェートやサウジへ取材に行かれたそうですね。