パレスチナ情勢が急速に悪化している。池上彰氏は「地図からイスラエルとパレスチナの置かれている複雑な状況や、各国の立ち位置を見定めることができる」という。ジャーナリストの増田ユリヤ氏と語った。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)
パレスチナ問題を講義する際には
「地図」の話から入る
増田 パレスチナのガザ地区を実効支配する武装組織、ハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエルも応酬、過去最高の30万人の予備役招集に及ぶなど、パレスチナ情勢が急速に悪化しています。
池上 予断を許さない状況ですが、日本では「パレスチナ問題が分からないので、分かりやすく解説してほしい」という声をよく聞きます。大学の授業でパレスチナ問題を扱う際には、「地図」の話から入ります。例えばイランの地図にはイスラエルの国名は書かれておらず、パレスチナと書かれていますが、その理由は何か。イランをはじめ、サウジアラビアやシリアなど、アラブ諸国はイスラエルを国とは認めていないからです。
イスラエルの領域の内側に存在するヨルダン川西岸地区や、今回イスラエルが反撃に出たガザ地区のようなパレスチナ人自治区も、イランの地図には存在しません。「全てパレスチナ人の地であり、イスラエルは存在しない」というのがイランの見解だからです。