クレーム対応では、話せば話すほど余計に相手を怒らせてしまう。商談では、プレゼンが空振りして、ろくに話を聞いてもらえない。こんなとき、頭のいい人はどんな対応をしているのか。2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販・トーハン調べ)に輝いた『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんに聞いた。(Books&Apps運営、企業コンサルティング 安達裕哉、構成/冨田ユウリ)
優秀な人は相手の口から
「ある言葉」が出るのを待つ
商談や交渉など、ビジネスでは営業力が求められるシーンが多いですが、効果的な営業とはどういうものでしょう。飛び込み営業などで初めて先方に会う際には、まずは自社が行っている事業や提案内容をまとめて資料を作成する、という人は多いかもしれません。ですがこの「とりあえずの資料作成」は、実はあまり効果的とはいえません。
私が勤めていたコンサルティング会社では「提案書を書くな」「見積もりを持っていくな」とまで言われていました。というのも、そうした行為は相手に「売り込まれている」という印象を与えてしまうからです。売り込まれていると思った瞬間、相手は話を聞きたくなくなってしまうことがほとんどです。
では、優秀な人はどう自分をアピールするのか。
私のかつての上司に、仕事が非常によくできるAさんがいました。Aさんは普段はよく話す人で、頭の回転も速く、マーケティングの知識も豊富。私にはいろいろとアドバイスをしてくれていたのですが、ビジネスの現場に行くと全く話さなくなるんです。トーク力も能力もあるはずなのに、一気におとなしくなる。
それはAさんが、先方が発する「ある言葉」を待っていたからなんです。