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インキュベーションの虚と実

世界から熱い視線を注がれる500 Startups
起業家を成功に導く文化と手法とは何か【前編】

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第24回】 2013年4月8日
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 さらに、現在、二つの新たな計画が進行中だ。一つは、ニューヨークでのコワーキング・スペース設置だ。ニューヨークで活動する投資先企業も増え、経済性とコミュニティづくりの面で意味があると、スペースを借りるべく進めている。

 もう一つは、サンフランシスコにもオフィスを設ける構想だ。シリコンバレーの中心地であるマウンテンビューとサンフランシスコは車での移動に時間がかかる。サンフランシスコのサウス・オブ・マーケットはスタートアップのもう一つのメッカとなっている。500 Startupsのメンターもサンフランシスコ在住者は多く、オフィスアワーの面会はサンフランシスコで、というニーズも多い。将来的にはアクセラレーター・プログラムをサンフランシスコでも開催できれば、大きなプラスになるだろう。

 ずいぶんと手を広げるなあと思う読者も多いだろう。ツアイ氏は「500は他の投資家とはずいぶん異なる。あれこれ沢山やりすぎと思う人もいるだろう。それを可能にしているのはカルチャーだ。チーム、コミュニティとして、強いカルチャーが醸成されている。それが、よい投資の成果につながるのです」

 ここでツアイ氏が言う500のカルチャーとは、スタートアップを楽しみ、オープンで、知恵や経験をシェアすることで学び、成長し、スゴイことを成し遂げようとするものだ。

 もともとシリコンバレーには教え合う文化があるが、500の持つ「500 Family」と呼ぶ家族のようにつながり、助け合おうというスピリットは特筆すべきものだ。

 また、楽しみ、アクション・オリエンテッドなところは、日本のベンチャー・キャピタルやエンジェル投資家との違いを痛感する点だ。

 頑張ることは同じだが、日本では、「寝食を忘れて働け」「苦しくても辛抱しろ」などと、楽しみより苦しい面を誇張する傾向がある。また、失敗をよしとしない日本では、「ちゃんと考えてから起業しろ」や「このアイデアじゃ、うまくいかない」というような、慎重あるいは否定的な声を起業家に浴びせることが多い。

 しかし、500のチームやメンターは起業家たち、「awesome!(すばらしい)」、「interesting!(面白い)」といった肯定的な言葉をかける。また、具体的なアドバイスを与えることが多い。経営理論を押さえた上で、「前に進め」「失敗を恐れるな」と鼓舞する。

 前述の今年二月に大阪で行なわれたイベントでも、橋下大阪市長の前で、「出る釘になれ」「七転び八起き」とマクルーア氏は連呼し、ツイッターやテレビのニュースで注目された。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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